誤答パターンからの公認心理師試験対策(産業・統計)④

6月末に公開した公認心理師試験対策練習問題(産業・統計)に対する回答を分析し、誤答パターンから公認心理師受験生が理解しておくべきポイントの解説を行います。今回からは、統計・研究法分野の解説になります。まずは、設問6の解説を行います。今回も無回答の受験者を除いた190人の回答を分析対象としました。

設問6は適切なものの組み合わせを選ぶ内容です。正答は「アとエ」になります。なお、5つ目の誤答の選択肢は「ウとオ」とすべきところ誤って「ウとエ」となっておりました。大変失礼しました。

次の文章で適切なものの組み合わせを選択しなさい。

ア 観察法と実験法では、一般に後者の方が生態学的妥当性が低くなる。

イ 実験法においてインフォームド・コンセントは実験実施前に行い、インフォームド・アセントは実験実施後に行う手続きである。

ウ 人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(平成29年2月28日一部改正)においては、インフォームド・コンセントの際に説明すべき事項は、研究に応じて研究者が任意に決定すべきとされている。

エ 面接法においては、非構造化面接の方が構造化面接よりも、面接で聞く内容、順序の自由度が高い。

オ グラウンディッドセオリーアプローチは過去に行われた各研究の効果量を統合して仮説形成を目指す方法である。

<選択肢>

①アとウ ②アとエ ③イとウ ④ウとエ ⑤ウとエ

 

誤答で多かったのは、「ウとエ」を選択したパターンでした。

ウに関しては、「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」の23ページ以降に「インフォームド・コンセントを受ける際に研究対象者等に対し説明すべき事項は、 原則として以下のとおりとする」とあり、インフォームド・コンセントを研究対象者から得る際に、研究対象者に対して説明すべき事項として21項目が列挙されていることから誤答になります。

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10600000-Daijinkanboukouseikagakuka/0000153339.pdf

エに関しては、正しい内容です。

なお、イについては、インフォームド・コンセント、インフォームド・アセントともに研究実施前に行う手続きですので誤りです。インフォームド・アセントの意味が分からないという方は、上記の「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」の4ページを参照して下さい。本指針はブループリント(出題基準)にも含まれていますので、未読の方は、一読しておくことをお勧めします。

その他、観察法、実験法、面接法それぞれの特徴について、不明な点があれば復習しておきましょう。

次に、設問7です。誤った発言をしている学生の組み合わせを選択するパターンです。

教員と学生の研究に関する会話を読んで、誤った発言をしている学生の組合せとして最も適切な選択肢を選択しなさい。

教員「さて、質問紙調査法によって、従業員の職務満足度と仕事のパフォーマンスの関係を調査する場合に、どのような点に注意すれば良いでしょうか?」

学生A「それぞれの概念を測定する調査票の信頼性と妥当性が問題になると思います。信頼性と妥当性の検証された調査票を使うことが重要だと思います」

学生B「信頼性は、測定値のばらつきに占める真の値のばらつきの大きさで定義されますね」

学生C「仕事のパフォーマンスは、自己申告の調査票で測定すると、特に妥当性が気になります。クロンバックのα係数を算出して妥当性の高さを検討すれば良いと思います」

学生D「仕事のパフォーマンスは、たとえば、同僚2人による評価にすれば妥当性が高くなるのではないでしょうか?」

学生E「その場合、同僚2人の評価者間信頼性が問題となりますね。コーエンのカッパ係数を算出して検討すれば良いと思います」

教員「職務満足度を独立変数、仕事のパフォーマンスを従属変数として考えた場合に、両者に影響を及ぼす、たとえば、年収のような剰余変数(交絡変数)はないでしょうか?」

学生F「年収は剰余変数(交絡変数)として統制するべきだと思います。今回のような場合は、均衡化による統制が良いのではないでしょうか?」

<選択肢>

①学生Bと学生C ②学生Bと学生E ③学生Cと学生E ④学生Cと学生F ⑤学生Eと学生F

 

正答は「学生Cと学生F」となりますが、すべての選択肢で選択者の割合がほぼ同水準となっており、正答が難しかった設問と言えます。

学生Bの発言の、信頼性の定義については非常に重要です。馴染みのなかった方は確認しておいてください。信頼性が高いということは、測定値のばらつき(分散)に占める真の値のばらつき(分散)が大きいことです。信頼性の定義においては、測定値のばらつき(分散)=真の値のばらつき(分散)+誤差のばらつき(分散)と考えますので、信頼性が高い=ある対象を繰り返し測定した時のばらつき(分散)に占める誤差のばらつき(分散)が小さいとも言えます。

学生Cの発言については、「クロンバックのアルファ係数を用いて妥当性を検討する」という点が誤りです。クロンバックのアルファ係数は信頼性の検討に用いる手法です。妥当性は、心理尺度が測定しようとしている概念を適切に測定している程度ですので、たとえば、理論的に仕事のパフォーマンスとの相関が予想される他の心理尺度との相関を検討するなどが妥当性を検討する方法と言えます。

学生Dと学生Eの発言については正しい内容です。特に学生Eが、同僚2人による評価によって仕事のパフォーマンスを測定することとした場合、2人の評価者の一致度、すなわち評価者間信頼性の検討が必要と指摘している点と、その検討方法としてコーエンのカッパ係数を挙げている点は重要です。

学生Fの発言については、年収を剰余変数(交絡変数)として統制する方法として均衡化を挙げている点が不適切です。均衡化は、たとえば、独立変数の水準を条件として、参加者を無作為割り付けすることにより、独立変数の水準間で剰余変数(交絡変数)が集団として平均的に等しくなるようにすることで、剰余変数(交絡変数)が従属変数に及ぼす影響を除く方法です。今回の事例の場合、独立変数である参加者の職務満足度を操作して、職務満足度の高位群、中位群、低位群に無作為に割り付けるといった処理は非現実的なので均衡化による統制は不適切と考えられます。むしろ、今回の事例であれば、同じ年収のグループを作って、その中で、独立変数である職務満足度と従属変数である仕事のパフォーマンスの関係を検討するといった恒常化による統制が考えられます。

以 上

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