誤答パターンからの公認心理師試験対策(産業・統計)⑥

6月末に公開した公認心理師試験対策練習問題(産業・統計)に対する回答を分析し、誤答パターンから公認心理師受験生が理解しておくべきポイントの解説を行います。今回からは、統計・研究法分野の第4問目、全体では9問目の解説を行います。

今回は多変量解析手法の関連する文章について、適切なもの組み合わせを選択する問題です。

多変量解析手法に関連する以下の文章について、適切なものの組み合わせとして正しい選択肢を選択しなさい。

ア 現代的テスト理論の1手法である項目反応理論は、項目の難易度を扱わない手法である。

イ 対数線形モデルは、2×2×2など多次元の分割表(連関表、クロス集計法)を対象として、カテゴリー間の独立性を検討出来る手法である。

ウ 因子分析において、プロマックス回転は因子間の相関を仮定する斜交回転による方法である。

エ 共分散構造分析(構造方程式モデリング)において、1つのデータには1つのモデルのみ当てはめることが出来る。

オ 重回帰分析において、男性と女性の2値を取る名義尺度(性別)を独立変数に投入する場合、ダミー変数は2つ必要となる。

<選択肢>
アとウ
アとオ
イとウ
イとオ
ウとオ

回答パターンを見てみると、誤答の「イとオ」を選択した方が最も多く、続いて正答の「イとウ」を選択した方が多く、続いて誤答の「ウとオ」を選択した方が多いという結果となりました。選択肢アは正答候補から外せた方が多く、イ、ウ、オで迷ったという方が多かったように思われます。このように少しでも知識があれば、選択肢を絞ることで正答率を上げることが出来ますので、多変量解析手法のようなやや応用的な内容についても概要は理解しておくと良いでしょう。

選択肢を順に検討します。

まず、アですが、項目反応理論に関する問題です。出題基準(ブループリント)には「テスト理論」となっていますが、試験対策としては、テスト理論の中で最も有名な項目反応理論を理解しておくことが重要です。選択肢アは、「項目反応理論は項目の難易度を扱わない手法である」という点が誤りです。項目反応理論は、項目に対する正答/誤答といった反応パターンと回答者の潜在特性(学力等)の関係を数学的に表すことで、項目の特性と回答者の特性を独立して分析することができる手法です。項目の特性としては、項目の難易度、識別力などが含まれており、項目の特性を変化させることにより、さまざまな特徴の項目を表現できます。

イは正しい内容です。対数線形モデルは、かなり応用的な手法ですが、現任者講習会テキストにて言及されておりますので、選択肢としました。
最近世間を騒がせていますが、男性か女性かで合格率が異なるかを検討する際に、受験者を男性/女性×合格/不合格のクロス表(連関表)にまとめて、男性か女性かで合格率が異なるか、言い換えると、性別と合否の間に関連があるかをカイ2乗検定を用いて仮説検定するというのは、心理統計を勉強された方はご存知の方が多いと思います。対数線形モデルは、その応用版で、男性/女性×合格/不合格×現役/浪人のような多次元のクロス表(連関表)に対して、性別と合格/不合格には関連がないが、現役/浪人と合格/不合格には関連があるといった、カテゴリ間の複雑な仮説を検討することができる手法です。

ウも正しい内容です。因子分析の因子の回転手法の内容です。因子の回転手法は有名なものからマイナーなものまでいろいろありますが、因子間に相関を仮定する斜交回転か、因子間に相関を仮定しない直交回転に分類することができます。試験対策としては、プロマックス回転は前者の代表例、後者の代表例としてはバリマックス回転という名称をまずは覚えましょう。

エは誤答です。構造方程式モデリングは、共分散構造分析と呼ばれる手法で、変数間の関係性を表現する手法です。変数は観測変数と潜在変数の両方を扱うことが出来ます。構造方程式モデリングでは、1つのデータに対して、変数間の関係性を方程式を用いて表現し、そのデータへの当てはまりの良さをさまざまな適合度指標を用いて評価します。1つのデータに対して、変数間の関係性(=モデル)として、さまざまなパターンを当てはめることがことが出来ますので、「1つのデータに対して、1つのモデルのみ当てはめることが出来る」という点は不適切です。
ちなみに、構造方程式モデリングでは因子分析と同等のモデルを表現することができるため、最近では、因子数をスクリープロット等を用いた因子分析の枠組みではなく、構造方程式モデリングの枠組みで検討することが多くなっています。具体的には、潜在変数として1因子を仮定するモデル、2因子を仮定するモデル、3因子を仮定するモデル、、、と複数のモデルを作成し、どのモデルが最もデータへの当てはまりのが良いかを適合度指標によって検討します。

オは誤答です。ダミー変数は0か1の値を取るようにした変数です。男性と女性の2つのカテゴリを持つ名義変数の場合、ダミー変数Xを1つ用意すれば、男性(X=0)、女性(X=1)、あるいは女性(X=0)、男性(X=1)として表現することができます。一般に、名義変数をダミー変数として表現する場合、カテゴリ数-1個のダミー変数が必要になります。ダミー変数は、社会心理学などの質問調査法によるデータを分析することの多い分野では、性別や学歴といった剰余変数の影響を調整するためによく用いられます。

以 上

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