ストレスチェックのデータは宝の山?

はじめに

2015年12月に施行されたストレスチェック制度は施行から約5年目を迎えています。今年も全国各地の企業あるいは地方自治体等においてストレスチェックが実施されているかと思います。

ストレスチェックを実施すると、ストレスチェックを実施した企業はストレスチェックの集団分析結果を得ることになります。企業あるいは地方自治体であれば、自社あるいは自団体のストレスチェックを受検した従業員や職員のストレスチェックの集団分析結果を毎年収集し続けることになります。

ストレスチェックサービスを提供するベンダーであれば、ストレスチェックの実施者が存在すれば顧客企業の従業員や職員の数だけストレスチェックの個人の回答データを収集することになります。

昨今のビッグデータの流れからすると、「ストレスチェックのデータをたくさん保有している場合はそのデータは非常に価値がある」と考えられます。果たしてそうなのでしょうか?

ストレスチェック結果の活用は難しい

弊社はストレスチェックの回答データそのものにはあまり価値がないと考えています。弊社がそう考える理由の1つとして、目的外利用が厳しく制限されている点を挙げたいと思います。

ストレスチェックのデータの取り扱いについては、労働安全衛生法及び法令が優先して適用され、それ以外の場合には個人情報保護法が適用されます。

ストレスチェックのデータは、ストレスチェック制度における受検者本人への結果の通知や職場環境改善のための集計・分析に用いることが想定されています。そのため、そうした目的外でストレスチェックのデータを利用する場合は、個人情報保護法に準拠することになります。特に、ストレスチェックの結果は個人情報保護法の要配慮情報に該当すると考えられるため、通常の個人情報よりも厳しい利用制約が課されます。具体的には利用目的の特定、通知又は公表に加え、あらかじめ本人の同意が必要となると考えられます。

個人情報保護法の概要については下記が参考になります。https://www.ppc.go.jp/files/pdf/kojinjouhou_handbook.pdf

事業者が、労働安全衛生法(昭和 47 年法律第 57 号)に基づき実施する健康診断等の健康を確保するための措置(以下「健康確保措置」という。)や任意に行う労働者の健康管理活動を通じて得た労働者の心身の状態に関する情報(以下「心身の状態の情報」という。)については、そのほとんどが個人情報の保護に関する法律(平成 15 年法律第57 号)第2条第3項に規定する「要配慮個人情報」に該当する機微な情報である。

労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する
指針 https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/000343667.pdf

したがって、本人への結果の通知や職場環境改善といったストレスチェック制度で想定される目的以外でストレスチェックの結果を利用するには、予めそういった利用目的をストレスチェックの受検者に通知し本人の同意を得ることが必要となると考えられます。このハードルをクリア出来て初めて、たとえば、ストレスチェックの結果返却時にストレスチェックの結果に応じて、外部のベンダーが提供するフィットネスジムや健康食品を推薦し、企業は広告収入を得るといった使い方が可能となると考えられます。

また、労働安全衛生法によって実施者及び実施事務従事者以外への同意なしのストレスチェックの個人の結果の提供が出来ないことにも注意が必要です。仮に上記の例の、フィットネスジムや健康食品の推薦については同意を得られたとしても、外部ベンダーへのストレスチェックの個人の結果を提供することの同意を得ることは困難と考えられます。

実施者や実施事務従事者以外はストレスチェックの個人結果にアクセスできないような態勢の下、推薦のアルゴリズムをシステムに組み込んでおき、一定のアルゴリズムで自動的に推薦するといった工夫が必要となるでしょう。

最後に、当然のことながら、ストレスチェックによって推薦されるサービスや商品の妥当性も確保される必要があります。例えば、適度な運動や趣味を持つことがストレス低減に有用であることが知られているため、ストレスチェックの結果に応じて運動や趣味につながるサービスの推薦はあり得ても、全く関連のないサービスの推薦はストレスチェック受検者の反発を招く可能性が高くなります。

ストレスチェックのデータの価値を増すには?

次に、ストレスチェックのデータを分析して、有用な価値は生み出せないのか考えてみます。弊社では、ストレスチェックの集団分析結果に有用なデータを追加して、ストレスチェックの環境改善をより効果的に実施することをお薦めします。

例えば以下のような進め方が考えられます。

企業であれば、まず、各部門のメンタルヘルスや従業員の働きやすさ向上につながると考えられる取り組みの実践についてヒアリングしてデータ化します。以下のような調査票が考えられます。

Q1 あなたの部門では、管理職が定期的な1対1面談を実施していますか?下記から、最も近いものを選択してください。

未実施/年に1回程度/半年に1回程度/四半期に1回程度/毎月1回以上

自社の全部門から上記の質問の回答データを収集したら、ストレスチェックの集団分析結果と結合します。その結果、管理職が定期的な1対1面談をしている部門の方がストレスチェックの結果が良いということが分かるかもしれません。

また、上記の各部門の結果を経年で把握し、面談の実施頻度が上昇した部門と低下した部門でストレスチェックの結果がどう変化するかを分析することも可能と考えられます。

ストレスチェックベンダーにおいては、各企業の態勢やメンタルヘルスに対する取り組み状況をアンケート等により把握し、そのデータと各企業のストレスチェックの集団分析結果を組み合わせることが考えられます。たとえば、メンタルヘルス研修を実施している企業の方が、ストレスチェックの結果が良いということが分かるかもしれません。

このように、職場環境改善に有用と考えられる他のデータを新たに収集してストレスチェックのデータ(特に集団分析結果)に組み合わせることで、付加価値を出していくことが考えられます。

なお、上記の例の企業や部門の取り組み内容に関する情報は個人情報に該当しないと考えられますが、部門の管理職の自身に関わる情報に関しては、個人情報法保護法に則った情報の取得、取り扱いが必要になる点は留意が必要です。

以 上

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