(英語の)学術論文を速く読んで学術知見を得る方法

はじめに

弊社ではピープルアナリティクス分野を中心にサーベイ開発や分析技術を応用したサービスの開発のご相談を受けることが多いのですが、「サービス開発にあたり学術論文を参考にしたいが論文を速く読むにはどうしたら良いか」というご相談を受けることがあります。また、弊社代表取締役が非常勤で教えている大学の学生からも先行研究の学術論文を速く読むためにはどうすれば良いかという趣旨の相談を受けることがあります。そこで、今回はそういった質問に答える形で解説をしたいと思います

英語の専門用語を覚える

まず、第一点としては学術論文の多くが英語で書かれていますので英語が速く読める事が重要です。ただ英語と言っても大学受験で出題されるような抽象度の高い複雑な構文の文章であることは、少なくとも科学論文においてはありません。科学分野の学術論文は簡潔に情報を伝えることが重要とされておりますので、具体的な内容が平易な構文で書かれています。

また、読解に必要となる英語の語彙というのはそこまで多くはありません。英語においては様々な感情などを表現する形容詞が豊富ということが知られておりますが、学術論文においてはそういった主観的な感情的な表現が登場することはほぼありませんので、英語のノンネイティブにとっては楽だと言えます。

英語の学術論文を読むために重要なのは、読みたい分野の学術領域で頻出する専門用語を覚えることです。日常使われる意味とは全く異なる意味で用いられることも多いので、専門用語と学術的な意味をセットで覚えることが重要です。日本語の教科書でも専門用語に英語が併記されているものがありますので、そうった教科書を持っている場合は、参考にすることをお薦めします。

読みたい分野の知識を増やす

次に、学術論文を速く読むのに必要なのは、その分野の知識です。論文を速く読める状態になるには、逐一英語の文章の意味を考えるのではなく、「この展開であれば次の段落にはこの内容が来るな」とか「この主張の後は具体例が来るな」といった次の文章や段落の予測をしながら読む状態になる必要があります。「読む」というよりは予測の検証ないし確認と言えるかもしれません。

その分野の知識は学術論文に書いてありますので「学術論文を速く読むためには学術論文をたくさん読む」というのが身も蓋もない真実と言えるかもしれません。

学術論文の形式は科学分野であれば分野によらず、以下のようにある程度共通したフォーマットで書かれています。

初めに、研究の意義、これまで明らかになっている研究的知見や理論、今回の研究で明らかにすることを整理して述べたIntroductionあるいはBackground(序論、背景、導入、緒言等)があります。その次に、Method(方法)で、どのような参加者を対象として、どのような材料、装置を用い、どのような統計解析を行ったのかが記述されます。

次がResult(結果)です。ここでは、研究の結果得られた知見が、基本的には図や表と付随する文章で説明されます。最後がDiscussion(考察)の部分で、研究から得られた結果について先行研究の知見との整合性などを踏まえて議論をします。

上記のような学術論文のうち、IntroductionとMethodについては同じ分野の論文ではほとんど同じような内容であることが多いです。学術研究がこれまで行われてきた研究の知見を踏まえ、それに一部プラスアルファするという形で行われますので、Introductionの内容については同じ分野の論文であれば必然的に似通った内容になります。

Methodについても、従来行われてきた方法と抜本的に異なる方法で研究を行う場合を別とすれば、同じ領域での学術論文の<方法>は定番の材料、装置を用いた定番の内容が多いです。また、難しいと感じる方の多い<Statistical Analysis;統計解析>についても同じ領域の学術論文では同じ手法が用いられることが多いです。したがって 同じ領域の学術論文を数本読めば、その後は読解スピードが格段に上がることが多いです。

Resultでは表やグラフの形式がその分野で典型的なものが用いられることが通例です。従ってその分野の論文を読んだことがあれば表やグラフを見てもすぐその結果を一定程度理解すること出来、文章をその後確認目的で読むといった読み方ができます。

学術論文の最後のパートのDiscussionには、その論文で独自に述べられてることが多いのでしっかり読む必要があります。仮説検証型の研究であれば、仮説が支持されたのか支持されなかったのかの理由について述べられているので確認します。ただし、その際も考察の内容は先行研究を踏まえて内容であることが一般的ですので、その分野の先行研究を既に読んでいれば読解スピードが格段に上がります。

弊社代表取締役のイメージでは、学術論文の読解の所要時間のバランスは、既知の分野であれば、全体を10とするとIntroduction=2、Method=1、Result=3、Discussion=4のイメージです。初めて読む分野の論文であれば、IntroductionとMethodに必要となる時間のウェートが上がるイメージです。

効率よく論文読解力を付けるには?

学術論文の読解スピードを上げるのはスポーツのトレーニングと同じで一定量の論文を実際に試行錯誤しながら読むことなしに論文の効率の良い読解力を身に着けることは不可能と思います。

学術論文を速く読むためのトレーニングとして最も効率の良い方法は、大学で行われているような輪読形式で学術論文を読むことです。読みたい分野の論文の読める人(目安として大学の教員か博士課程の大学院生)と一緒に論文を一緒に読み自分の読解が正しいのかを確認しながら読むのが最も効率が良い方法と思います。ただし民間企業勤務で大学卒業後に大学等とのコネクションがなくなってしまっている場合は輪読形式で論文を読むのが難しいかもしれません。弊社においては心理学、行動科学分野の学術論文を読むためのトレーニングプログラムを提供予定ですので受講をご検討いただけますと幸いです。

以 上

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