厚生労働省の年次報告書からコロナ禍の影響を振り返る

厚生労働省から年次報告書である令和3年版厚生労働白書と労働経済の分析が公表されました。それぞれにおいて、新型コロナウイルス感染症の影響が特集されています。そこで、今回はそれぞれの報告書の読みどころを紹介したいと思います。

厚生労働白書

令和3年度版のタイトルは、「新型コロナウイルス感染症と社会保障」となっており、新型コロナウイルス感染拡大が及ぼした影響がさまざまな調査結果を踏まえて記述されています。

https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/20/

今回は、同白書の中から特徴的な知見を以下2点挙げたいと思います。

まず、男女による生活満足度やメンタルヘルスに関する影響の差が顕著であることが挙げられます。

新型コロナウイルス感染拡大前と後での生活満足度の変化を男女別に見ると、男性女性ともに生活満足度が新型コロナウイルス感染拡大後に低下しているのですが、女性の方が生活満足度の低下幅が大きいことが分かっています。

⇒12頁 図表1-1-2-6  新型コロナ感染拡大前後の生活全体の満足度の変化

この点と軌を一にしているのが、自殺者数の変化です。2019年度と比較して、若い世代と女性で自殺者数が増加していることが分かります。

⇒58頁 図表1-2-2-8  2020年の自殺者数の動向(前年比・年齢別・男女別)

その他にも職種や雇用形態による新型コロナウイルス感染拡大によって影響に差があることが分析されています。パンデミックによる影響はその人の置かれた属性によって大きな差があったということが特徴と言えると思います。

労働経済の分析

令和3年度版の労働経済の分析においてもタイトルが「新型コロナウイルス感染症が雇用・労働に及ぼした影響」となっており、特に雇用、労働の側面からみた新型コロナウイルス感染症の影響が記述されています。

特に、ページが割かれているのが新型コロナウイルス感染拡大を機に急速に普及したテレワークです。

https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/20/dl/20-1-2-2_01.pdf

テレワークに関しては以下のように総括されており、テレワークの普及は一時的なものにとどまったことが示されています。

新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて緊急事態宣言(2020年4月7日から5月25日まで)の発出を契機に、感染拡大防止の観点からテレワークは急速に広まった。しかしながら、後述するように、緊急事態宣言の解除以降、テレワークの実施率は減少傾向となり、テレワークの実施が感染拡大防止のための一時的なものにとどまった企業・労働者が多いことが推察される。

令和3年度版「労働経済の分析」283頁

また、テレワーク利用が一時的なものにとどまった理由については、以下のように総括されています。

緊急事態宣言を機に企業・労働者ともにテレワークが急速に普及したものの、緊急事態宣言下にテレワークを初めて実施した企業・労働者においては、それ以前からテレワークを実施していた企業・労働者に比べ、その後に継続している割合が低く、テレワークをうまく運用できていない企業の割合が高いことが明らかになった。また、業種別や職種別の分析を踏まえると、現場での業務や対面でのやり取りの必要性が高いといった業務の性質上テレワークの普及が進んでいない企業・労働者が一定割合存在すると考えられるものの、テレワークの活用が低調な業種でもテレワークを経験した者のその後の継続率は低くない場合もあり、そうした業種等であってもテレワークを定着させていくことができる可能性があることがうかがえる。

令和3年度版「労働経済の分析」300頁

以上を踏まえると、テレワークがより一層今後普及するためには、業務そのもののデジタル化等により現場や対面での業務をなるべく減らすこと、テレワークを継続することによりそのノウハウを蓄積することが必要と言えそうです。

以 上

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