ハラスメントは管理職だけ気をつければ良い?

はじめに

2019年6月5日に女性の職業生活における活躍の推進等に関する法律等の一部を改正する法律が公布され、労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法及び育児・介護休業法が改正されました。この改正により、職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となっています。

中小企業主に関しては、パワーハラスメントの雇用管理上の措置義務については経過措置として準備期間が設けられており、2022年4月1日から義務化されます。従って、全ての事業主において、2022年4月1日からパワーハラスメントハラスメントの防止措置が義務付けられたことになります。

https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000611025.pdf

ハラスメント防止は管理職だけが気をつければ良いのか?

このような動きを受けて、管理職に対してハラスメント防止研修を実施したり、これまでの管理職向け研修にパワーハラスメント防止に関する内容を追加した企業は多いと思います。しかし、「職場のハラスメント防止=管理職研修」という思い込みには注意が必要です。というのは、管理職がハラスメントにならないよう気を付けていても、職場の一部でもハラスメントが行われていると、職場全体に悪影響を及ぼすことが分かっているからです。

ハラスメントを目撃することの心理的影響

2007年に公表されたMiner-Rubino とCortina による研究では、職場でハラスメントを目撃した従業員にも悪影響があることが分かっています。

Miner-Rubino, K., & Cortina, L. M. (2007). Beyond targets: Consequences of vicarious exposure to misogyny at work. Journal of Applied Psychology, 92(5), 1254–1269. https://doi.org/10.1037/0021-9010.92.5.1254

この研究では米国の大学の教職員を対象にした調査を実施し、女性教職員に対する見下した言動やセクシュアルハラスメント等(以下、セクシュアルハラスメント等)を過去一年で目撃したか、心理的ウェルビーイング、身体的ウェルビーイング、職務満足等を調べました。

その結果、調査対象者自身に対する失礼な言動、セクシュアルハラスメントの影響を考慮しても、そういったセクシュアルハラスメント等を目撃した教職員は、心理的なウェルビーイングが低い傾向にありました。男女別の解析でもこの傾向には差がなく、男性教職員であっても女性教職員であっても、女性教職員に対するセクシュアルハラスメント等を目撃した教職員は心理的ウェルビーイングが低いことが分かりました。

つまり、自分自身がセクシュアルハラスメント等の犠牲者にならなくても、職場でそういった行為が行われていると心理的に悪影響があるということを示唆しています。

研究を踏まえた望まれる対応

管理職としては、自分自身のコミュニケーションについて気を付けるのはもちろんのこと、職場の中で、パワーハラスメントやセクシュアルハラスメント、侮辱や嘲笑のような不適切なコニュケーションが行われていないか目を光らせ、目撃した場合には速やかに介入して是正することが求められます。パワーハラスメントに関しては、管理職ではない指導役の先輩社員が後輩社員をからかったり馬鹿にした言動を取っていないか、先輩社員が後輩社員に私用の買い物を命令する、先輩社員が後輩社員に飲み会への参加を強要するといった行為が行われていないか職場を見渡してみましょう。

組織全体の取り組みとしては、今回のパワーハラスメントの防止措置の義務化を契機として、人事部門等が主導して、管理職のみならず従業員全員に対して、セクシュアルハラスメントやパワーハラスメントについて復習するとともに、職場でお互いに敬意を持った、快いコミュニケーションを築けるように日頃のコニュケーションの在り方を見直す機会を設けることも有効と考えられます。

 以 上

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