2018年度公認心理師試験予想問題「ストレスチェック制度」

先日、公認心理師試験の実施日程等が公表されましたが、ストレスチェック制度に関しては現任者講習会テキスト118頁から119頁で解説されており、出題の可能性が高い範囲と考えられます。

ストレスチェック制度に関するコンサルティングやサービス開発を行っている弊社として、ストレスチェック制度に関する公認心理師試験の予想問題を下記のように作成してみました。

ストレスチェック制度に関する次の1から5の文章のうち、最も適切なものを1つ選択しなさい。

1.ストレスチェック制度はメンタルヘルス不調者の早期発見(1次予防)を目的としている。

2.ストレスチェックの実施者になれるのは、医師、精神保健福祉士、研修を受けた保健師、看護師である。

3.ストレスチェックに用いる検査には①職場における心理的な負担の原因、②心身の自覚症状、③ハラスメントの有無を含めることとされている。

4.事業者は、集団分析結果を用いてストレス要因の低減に努めなければならない。

5.高ストレスとなった労働者は事業者に面接指導を申し出るよう努めなければならない。

 

 

 

 

 

如何でしょうか?以下解答と解説です。

1ですが、ストレスチェック制度の目的は、メンタルヘルス不調の未然防止(一次予防)ですので×です。

ストレスチェック制度の義務化は2012年度に一度国会に法案が提出されたものの審議未了で廃案となった経緯があります。その時はリーマンショック後という時期もあって自殺予備群の早期発見(二次予防)を目的としており、制度の名称も「メンタルチェック」という名称でした。

その後、2014年の国会に改めて法案が提出され成立した訳ですが、その際に「ストレスチェックの調査票ではうつ病の早期発見は不可能である」という声やメンタル不調者が医療機関に殺到する懸念が諸団体から上がったことなどから、制度の趣旨をメンタルヘルス不調の未然防止(一次予防)に衣替えしたという経緯があります。なお、一次予防、二次予防、三次予防という考え方は産業保健や公衆衛生学独特のものですので、他分野の方はこの機会に理解しておくと良いでしょう。

職場のメンタルヘルス分野においての一次予防は未然防止、二次予防は早期発見、三次予防は職場復帰支援等です。まず第一に心がけるのは未然防止、それが出来なかった場合には次善策として早期発見に努め、メンタル不調者が発生した場合は職場復帰支援等を行うという時間の流れを意識すると理解しやすいと思います。

2ですが、ストレスチェックを実施することが出来るいわゆる実施者になれるのは、医師、保健師、研修を受けた精神保健福祉士、看護師ですので×です。

なぜこれらの資格がストレスチェックの実施者として選定されたかは下記のような経緯があるようです。実施者はストレスチェックを受けた労働者のストレスチェック結果を把握することから守秘義務が法的に担保されている必要があるということで厚生労働省管轄の国家資格に限定されました。さらに、メンタルヘルスに関連がある国家資格ということで上記の4つの資格が実施者たり得る資格として選ばれております。なお、医師、保健師が研修を受けずに実施者になることが出来るのは、両者の養成カリキュラムに産業保健に関する分野が含まれていることが1つの理由のようです。

ちなみに公認心理師はストレスチェック制度創設時に存在しませんでしたので現状ではストレスチェックの実施者には含まれていないことにも注意が必要です。

労働安全衛生法という法律の第六十六条の十がストレスチェック制度の大枠を定めています。さらにその詳細を労働安全衛生法に紐付く労働安全衛生規則(厚生労働省令)が定める構造になっており、さらにその詳細を指針が定めるという構造になっています。

さて、ストレスチェックの実施者については下記の労働安全衛生規則第五十二条の十に定められています。今後公認心理師が追加されるとしたらこちらの条文が改正される訳です。また、同条2項に定められたストレスチェックの実施者には人事権のある人がなれないということも理解しておくと良いでしょう。医療機関等でストレスチェックを実施する場合に起こり得る事態ですが、評価や異動の権限を有する人事権者がストレスチェック結果を本人の同意なくして把握する立場である実施者になることで、ストレスチェックの結果が人事評価や異動に反映されることを防ぐ措置です。

第五十二条の十 法第六十六条の十第一項の厚生労働省令で定める者は、次に掲げる者(以下この節において「医師等」という。)とする。
一 医師
二 保健師
三 検査を行うために必要な知識についての研修であつて厚生労働大臣が定めるものを修了した看護師又は精神保健福祉士
2 検査を受ける労働者について解雇、昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、検査の実施の事務に従事してはならない。

3ですが、下記の労働安全衛生規則(厚生労働省令)の第五十二条の九に定められた通り、③セクハラ、ハラスメント等の有無ではなく③他の労働者(上司、同僚などの支援)が正解です。

第五十二条の九 事業者は、常時使用する労働者に対し、一年以内ごとに一回、定期に、次に掲げる事項について法第六十六条の十第一項に規定する心理的な負担の程度を把握するための検査(以下この節において「検査」という。)を行わなければならない。
一 職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目
二 当該労働者の心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目
三 職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目

ストレスチェック制度では職業性ストレス簡易調査票が標準的な調査票として想定されています。この職業性ストレス簡易調査票は職場のメンタルヘルスの代表的な考え方である、NIOSH(ナイオシュ)の職業性ストレスモデルを参考に開発されています。

http://www.kenkou-hataraku.metro.tokyo.jp/mental/about/material/niosh.html

NIOSHのモデルに含まれる「職場のストレス要因」、「急性のストレス反応」、「緩衝要因」がそれぞれ、①職場における心理的な負担の原因、②心身の自覚症状、③他の労働者(上司、同僚などの支援)に対応します。調査票によって①②③の領域を検査するのがストレスチェックとされています。労働者のストレスの程度はどの程度か、ストレスの原因となる仕事のストレスの要因はどのようなものがあり、どの程度か、ストレスを緩和する働きのある上司や同僚の支援はどの程度かをストレスチェックでは調べる訳です。

なお、NIOSHモデルで考慮されている、性格のような個人要因や、家庭など仕事以外の要因については検査されませんので、ストレスチェックの結果だけでは労働者のストレス状況を完全には把握できないことにも公認心理師になられる方にはご理解頂きたいと思います。

4は正解です。です。下記の労働安全衛生規則第五十二条の十四に下記のように集団分析結果の分析やそれを用いたストレス要因の低減については「しなければならない」ではなく「努めなければならない」という表現になっていることから努力義務と言えます。

第五十二条の十四 事業者は、検査を行つた場合は、当該検査を行つた医師等に、当該検査の結果を当該事業場の当該部署に所属する労働者の集団その他の一定規模の集団ごとに集計させ、その結果について分析させるよう努めなければならない。
2 事業者は、前項の分析の結果を勘案し、その必要があると認めるときは、当該集団の労働者の実情を考慮して、当該集団の労働者の心理的な負担を軽減するための適切な措置を講ずるよう努めなければならない。
厚生労働省所管の国家資格である社会保険労務士試験では義務と努力義務の区別が出来ているかを問う設問が多く出題されます。公認心理師試験においても関係行政論の分野では義務と努力義務の区別をしっかりすることが重要と思われます。ストレスチェック制度に関して義務と努力義務を以下にまとめましたので理解して頂ければと思います。

<義務>

  • 50名の事業場で事業者がストレスチェックを実施する
  • 事業者が面接指導を申し出た高ストレス者に対して面接指導を実施する
  • 事業者が面接指導結果を実施した医師から意見を聴取すうる
  • 事業者が必要に応じて面接指導を実施した労働者に対して就業上の措置を講じる
  • 50名以上の事業場で事業者がストレスチェック実施報告を所轄の労働基準監督署へ提出する

<努力義務>

  • 50名未満の事業場で事業者がストレスチェックを実施する
  • 集団分析を実施する
  • 集団分析の結果を活用したストレス低減(職場環境改善)を実施する

余談ですが、ストレスチェック制度の創設時に開催された有識者による検討会の議論では、集団分析結果の分析やそれを用いたストレス要因の低減を義務とするか努力義務とするかで激しい議論がありました。

義務とする意見の理由としては「ストレス低減には集団分析結果やそれを用いた職場環境改善が必須」というもの、努力義務とする意見の理由は「集団分析はまだまだノウハウが確立していない状態で義務とするには現場への負担が大きい、時期尚早である」というものでした。

検討会での議論の結果、努力義務とはするものの、なるべく事業者が取り組むようなインセンティブやプレッシャーを持たせるという落としどころで決着した経緯があります。労働基準監督署に事業者が提出するストレスチェック実施報告書に努力義務にも関わらず集団分析の実施の有無を問うチェックリストがあるのは、上記の事情が背景にあると考えられます。

なお、労働者にはストレスチェックを受ける義務も努力義務もありませんので注意が必要です。当初はストレスチェック制度においても健康診断と同じく労働者にも受ける義務を課すことが想定されていましたが、「メンタル不調者にストレスチェックを強制するのは良くない」という意見があり2014年度の国会提出直前に受検義務を定めた条文が労働安全衛生法の法案より削除された経緯があります。

5は高ストレス者が申し出るかどうかは労働者本人の意思に任されていますので、×です。なお、面接指導を申し出た者に対する事業者の面接指導の実施は「義務」ですので注意が必要です。下記労働安全衛生法の第六十六条の十を見て頂くと(少し分かりにくいのですが)、労働者はあくまで希望した場合に面接指導を受けることが出来、事業者は申し出した労働者に医師による面接指導を実施する義務を負っています。

第六十六条の十 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、保健師その他の厚生労働省令で定める者(以下この条において「医師等」という。)による心理的な負担の程度を把握するための検査を行わなければならない。
2 事業者は、前項の規定により行う検査を受けた労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、当該検査を行つた医師等から当該検査の結果が通知されるようにしなければならない。この場合において、当該医師等は、あらかじめ当該検査を受けた労働者の同意を得ないで、当該労働者の検査の結果を事業者に提供してはならない。
3 事業者は、前項の規定による通知を受けた労働者であつて、心理的な負担の程度が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当するものが医師による面接指導を受けることを希望する旨を申し出たときは、当該申出をした労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならない。この場合において、事業者は、労働者が当該申出をしたことを理由として、当該労働者に対し、不利益な取扱いをしてはならない。
事業者に労働者が面接指導を申し出るのは相当ハードルが高いことがストレスチェック制度の義務化以前から予想されておりましたが、実際に面接指導を申し出る労働者の割合は非常に低位に留まっている点が現状のストレスチェック制度の課題の一つとなっていることも公認心理師を目指される皆様にはぜひご理解頂きたいと思います。
以 上

 

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