公認心理師試験対策書籍レビュー「公認心理師必携テキスト」

公認心理師試験対策書籍が昨今数冊出版されておりますが、そのうちの一冊である学研メディカル秀潤社より出版されている「公認心理師必携テキスト」(https://gakken-mesh.jp/book/detail/9784780912920.html)(以下、本書)についてレビューしました。

<メリット>

●本文が多色刷りで、概念を説明したイラストが多く理解の助けになる。

単色だとテキストを読んでいて眠くなるので、多色刷りとなっている点はメリットと言えます。またイラストやフローチャートが多く用いられており、理解が促進される点も本書の大きなメリットと言えるでしょう。

●600頁超のボリュームで4500円(税別)と価格が良心的。

●基礎心理学分野についても要領よくまとまっている。

現任者講習会テキストは、基礎心理学分野に関する記述が1単元数ページで合計でも約50頁のため、基礎心理学分野の試験対策テキストとしては不十分です。本書では1単元約15~30頁を割いて記述されており、大学、大学院時代の学習内容が記憶に新しい方には、理解を確認する意味では十分なのではないかと感じます。ただし、その分野を初めて学ぶ方、その分野が苦手という方には記述が簡潔すぎると感じられる部分もあります。

●事例問題の例題が掲載されている。

公認心理師試験で大きなウェートを占める事例問題については、初回試験のためどのような問題が出題されるかは分かりませんが、本書では事例問題が9問掲載されていますので、事例問題の雰囲気は掴めるのではないかと思います。

<デメリット>

●本文のフォントが小さい。

600頁程度の書籍に多くの内容が盛り込まれているというメリットの裏返しですが、通常の書籍に比べるとフォントが小さいため、細かい字が読みづらい方には厳しいかもしれません。

●同じ概念でも現任者講習会テキストと表現が異なる場合がある。

本書は大学の研究者が中心になって執筆されていますが、金沢吉展明治学院大学教授、種市康太郎桜美林大学教授を除くと執筆者が出題委員ではありません。そのため、出題委員が執筆者の中心となっている現任者講習会テキストと同じ概念でも名称や説明が若干異なる部分があります。心理学分野では、多くの用語が外国語由来のため研究者によって若干訳語が異なる場合があるので已むを得ませんが、初学者の中には混乱する方もいるかもしれません。

発達心理学分野のピアジェによる認知機能の4つの発達段階を例に挙げますと、現任者講習会テキストでは、「感覚運動期⇒前操作期⇒具体的操作期⇒形式的操作期」となっているのに対して、本書では「感覚運動段階⇒前操作(自己中心的)段階⇒具体的思考段階⇒形式的操作段階」となっています。心理学系の学部、大学院出身者で土地勘のある方は問題ないと思いますが、心理学以外の分野出身の方は、研究者によって同じ概念であっても若干表現が異なることが有る点に留意し、本番の試験問題で若干表現が異なっても驚かないようにしておく必要があります。

●事例問題以外の練習問題がない。

これは已むを得ない点です。インプットした内容の定着度を確認するためには今後出版されるであろう予想問題集を購入したり、ネット上の有志による予想問題等を利用して演習することが必要でしょう。

本書の賢い利用法は、①本書を一通り通読して自分の知識や理解の穴を確認する、②予想問題で解けなかった問題の復習の際に本書を参照して確認する、③本書での記述が不十分だと感じた分野については本書以外の当該分野について書かれた書籍を参照する、ではないかと考えます。

以 上

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