断「コロナ関連ニュース」のすゝめ?

2020年初頭から始まった新型コロナウイルスの感染拡大に伴う状況、いわゆる「コロナ禍」が開始して1年が経とうとしています。

現在においても、新型コロナウイルスの感染拡大状況に関して日々さまざまなニュースが報道され、新規感染者発生数や有名人の感染など注目を集めるニュースが沢山流れています。

インターネット普及以前はニュースは主に新聞とテレビから入手するものであり、朝の食事の前後、夕食後の家族の団欒時にニュースに触れることが多く、それ以外の時間帯は、おやつ時のワイドショーや人からの噂話などにニュース源が限定されていたと思います。

しかし、現在においては、テレビ、新聞に加えてインターネット上のニュースで情報を得る、あるいは受動的にそうしたニュースに接してしまう機会が圧倒的に増加したと言えます。例えば、ホワイトカラーを中心にインターネットを利用して仕事のための情報収集を行うことが多い職種の場合は、業務中にもネットニュースに触れる機会が多くなっています。学生や専業主婦であっても、スマートフォン上でSNSを閲覧した際に、SNS上でもネットニュースが引用されているのを目にすることが多いのではないかと思います

ここでニュースと新型コロナウイルス感染症に関する不安の関連について東京大学の研究者によって行われた気になる論文を紹介したいと思います。

Sasaki N, Kuroda R, Tsuno K, Kawakami N. Exposure to media and fear and worry about COVID-19. Psychiatry Clin Neurosci. 2020 Sep;74(9):501-502. doi: 10.1111/pcn.13095. Epub 2020 Jul 17. PMID: 32588517; PMCID: PMC7361513.

下記URLにおいて無料でPDFが閲覧可能です。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7361513/

この論文は全国のフルタイム労働者を対象に2020年3月19日~22日に実施された調査をまとめたものになります。回答者は1448人でした。この調査では、新型コロナウイルスに関する情報源と新型コロナウイルス感染症に対する不安の関連を検討しています。

まず、新型コロナウイルスに関する情報源としては、「あなたは、新型コロナウイルス感染症についてどこから情報を得ていますか?」と尋ね、テレビのニュース、ラジオのニュース、新聞のニュース、インターネット記事、YouTube、Twitter、Facebook、その他のSNS、政府・自治体・専門機関のホームページ、家族や知人との会話、勤務先からの情報、医療機関・医療従事者からの情報、医学系論文、その他)に複数回答で「はい」「いいえ」で回答されたものを利用しています。

調査結果によれば、テレビのニュースと回答した人が最も多く(89.9%)、次いで、インターネット記事(66.1%)、家族や知人との会話(30.1%)の順でトップ3となっています。

一方の新型コロナウイルス感染症に対する不安は、「あなたは、新型コロナウイルス感染症について、不安を感じますか。それとも不安を感じませんか。」という設問に対する「とても不安を感じる」から「まったく不安を感じない」の6段階の回答で評価されています。

本論文のポイントは、性別や年齢、婚姻状況、職種等の影響を考慮した上で、新型コロナウイルスに関する情報源と新型コロナウイルス感染症に対する不安の関連を検討した点にあります。

結果からは、テレビのニュースを情報源としていると回答した人はそうでない人に比べて、新型コロナウイルス感染症に対する不安が高いことが明らかになっています。同様に、インターネット記事を情報源としていると回答した人は、そうでない人に比べて、新型コロナウイルス感染症に対する不安が高いことが明らかになっています。その他の情報源に関してはそのような差はなかったようです。

著者らも論文内で言及していますが、この調査は一時点の横断調査のため、テレビやインターネットを情報源としていると新型コロナウイルス感染症に対する不安が高くなるという可能性と、新型コロナウイルス感染症に対する不安が高い労働者はテレビやインターネットを情報源としがちであるという可能性を否定出来ません。テレビやインターネットを情報源とするとその後新型コロナウイルスに対する不安が高まるかについては、今後の縦断調査で確認される必要があります。

ここからは一般論となりますが、昨今のテレビであれば視聴率、インターネット記事であればPVを稼ぐために、こと新型コロナウイルス感染症関連のニュースに関してはセンセーショナルな表現になっていることが多いように感じます。

テレビを観るのは2~3日に1回にする、パソコンやスマートフォンをチェックするのは1日の決まった時間帯に限定する、業務でパソコンを使う労働者についてはネットニュースが表示されるポータルサイトのリンクを削除するといった、断捨離ならぬ断「コロナ関連ニュース」を試してみては如何でしょうか?

以 上

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