第3回公認心理師試験の産業・統計・研究法分野の講評

はじめに

さる2月12日に第3回公認心理師試験の合格発表が行われました。 受験者数 は13,629 人、合格者数 7,282 人で合格率は 53.4%となっています。第2回試験の合格率46.4%よりも若干上昇しています。

http://shinri-kenshu.jp/topics/20210212_1878.html

以降では、これまで公認心理師試験対策講座を運営してきた弊社が第3回の試験内容のうち、統計・研究法分野と産業分野に関して問題の講評を行いました。

統計・研究法分野

問7 統計的仮説検定に関する問題です。統計的仮説検定の考え方と、数式は覚えていなくても仮説検定を行うための統計量の確率分布のグラフのイメージが浮かばないと難しい問題だと感じます。<やや難>

問8 因果関係に関する問題です。心理学における因果関係の検証の考え方を理解していれば容易です。<易>

問12 心理尺度の信頼性、妥当性に関する問題です。基本的な内容です。<易>

問45  心理療法やカウンセリングの効果研究の方法に関する問題です。現状の心理学教育では扱われることがほとんどないテーマなので苦戦した方も多かったのではないかと主思います。心理療法やカウンセリングは無作為化比較試験のような要因の統制が難しいため一事例実験が行われることも多いこと、メタ分析について知っていれば解答が可能と思います。<難>

問59 実験計画に関する問題です。文章をグラフして考えると分かりやすいと思います。実験の主効果、交互作用が理解出来ていれば解答出来る問題です。<標準>

問80 質問紙法と比較したときの面接法の特徴に関する問題です。常識的に考えても正答が選べると思います。<易>

問81 多変量解析に関する問題です。正準相関分析は心理学の講義でも扱われることが稀で難しい手法ですが、因子分析や主成分分析等その他の手法を理解していれば消去法で解ける問題です。<標準>

問82  2×2のクロス集計表において変数間の関連性を示す指標に関する問題です。正答である四分点相関係数に馴染みがない方が多かったと思いますが、その他の相関係数が誤答であると判断して消去法で正答したい問題です。<やや難>

産業分野

問27 事業場における労働者のメンタルヘルスケアに関する問題です。労働者の心の健康の保持増進のための指針に準拠した問題です。指針そのものを読むのも良いですが、下記のようなパンフレットで文章表現にとらわれず制度の趣旨から理解することが重要です。<易>https://www.jaw.or.jp/anzen/rousai/pdf/rousai3_6-1.pdf

問28 F. Herzbergの二要因理論に関する問題です。二要因理論が理解出来ていれば迷う余地のない問題です。試験対策としては提唱者と理論の基本的な用語を覚えることが重要です。なお、公認心理師では人名が英語で表記されることが多いため、研究者の人名はカタカナと英語で覚えておくことをお薦めします。<易>

問40 管理職研修がテーマになっていますが、労働者の心の健康の保持増進のための指針と職域でのメンタルヘルス対策に関する基本的な理解を問う問題です。事業場で求められるメンタルヘルスケアは病気の診断ではないこと、従業員の仕事のパフォーマンスに注意し、不調が疑われる従業員の意見を傾聴し、産業医や主治医等の適切な専門家につなぐことが求められていることが理解出来ていれば正答が選べると思います。<易>

問57 男女雇用機会均等法に規定されているセクシュアル・ハラスメントに関する問題です。対価型セクシュアルハラスメント、環境型セクシュアルハラスメントという基本的な整理に加えて、同じく対策が義務化されているパワーハラスメントについても理解していれば容易に解答出来る問題です。<易>

問99 「小学校キャリア教育の手引き(改訂版)」が出題根拠となっている問題です。初見の方も多かったのではないかと思います。ただ常識的に考えて選択肢を絞れた人も多かったのではないかと思います。<やや難>

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/1293933.htm

問108  労働基準法に基づく年次有給休暇に基本的な理解を問う問題です。企業勤務経験のある人には常識なので容易だったかもしれません。<標準>

問148 安全文化に関する問題です。Reason, Jによる安全文化の4つの要素である報告する文化、正義の文化、柔軟な文化、学習する文化が理解出来ていれば正答にたどり着けると思います。

問151 ワークライフコンフリクトに関する事例問題です。スピルオーバー(仕事⇒家庭、家庭⇒仕事の流出)を知らない場合は、エキスパートシステムと悩んだかもしれませんが、エキスパートシステムが明らかに違うので正答できた方も多かったのではないかと思います。<標準>

総評

統計・研究法に関しては心理学に関する学部・大学院を出ている方とそうでない方で対策が全く異なります。

心理学に関する学部・大学院出身の方は、統計・研究法については講義を受け、かつ実際に実験や調査の実習を行った経験があると思いますので教科書を読み直して、過去問や問題集を解いて理解を確認するといった方法で対応できると思います。10~20年以上前に卒業された方はメタ分析、一事例実験、効果研究、多変量解析等は最近のテーマですので重点的に対策しておくことをお勧めします。

心理学以外の分野の出身の方で公認心理師試験を受験する方には統計や研究法はイメージが持ちづらい分野と思います。学習方法としては、わかりやすい心理統計や研究法に関する教科書を読むことをお勧めしますが、予備校等の対策講座を心理統計や研究法に関してのみ受講するというのもあると思います。文章だけでは頭の中でイメージを作れない可能性がありますので、図やグラフ、動画などで説明している授業が分かりやすいと思います。実験手法や統計法の説明だけを覚えるのでなくその考え方を理解することが試験対策につながります。特に心理学では科学的な考え方というのが非常に重視されておりますので、この科学的な考え方に馴染むことが統計・研究法分野の正答率を上げるポイントになります。

産業分野についてはこれまで多くの心理学の学部・大学院で扱われることがなかった分野ですので、一冊教科書を購入して通読し、基本的な学説や考え方、研究の歴史を理解することをお勧めします。労働関連の制度については厚生労働省等から法律や指針について解説するパンフレット等が公開されていますので、活用することをお勧めします。

以 上

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