人材の成長のカギは中堅~ベテラン従業員への上司による成長支援にあり

はじめに

現在日本において、政府が「人への投資」をスローガンとして掲げるなど産業競争向上のために人材の成長が必要だという認識が高まっています。そこで、今回は弊社が監修協力してサイオステクノロジー株式会社(https://sios.jp/)が開発したエンゲージメントサーベイであるOurEngage(アワエンゲージ)(https://www.ourengage.jp/)(※)のデータを元に、日本の労働者の成長感を分析してみたいと思います。

<執筆者紹介>宮中 大介。はたらく人の健康づくりの研究者、株式会社ベターオプションズ代表取締役。行動科学とデータサイエンスを活用した人事・健康経営コンサルティング、メンタルヘルス関連サービスの開発支援に従事。大学にてワーク・エンゲイジメント、ウェルビーイングに関する研究教育にも携わっている。MPH(公衆衛生学修士)、慶應義塾大学総合政策学部特任助教、日本カスタマ―ハラスメント対応協会顧問、東京大学大学院医学系研究科(公共健康医学専攻)修了

調査の概要は以下の通りです。

※OurEngage(アワエンゲージ)は、サイオステクノロジー株式会社にて登録商標申請中です。

<OurEngageサーベイ2022概要>

  • 調査期間:2022年3月
  • 調査対象:日本の労働者2,800名(20~65歳、製造業、情報通信業など7業種)

一般従業員では「自己成長」が35-39歳で最も低い

OurEngageは、従業員のエンゲージメントにつながる10要因の組織の状態を把握出来るサーベイです。今回はそのうち「自己成長」に着目して、年代によって「自己成長」がどのように異なるのかを検討します。

まず、管理職と一般職に分けて「自己成長」のスコアを比較すると、すべての年代において一般従業員に比べて管理職の「自己成長」が高いことが分かります。一般従業員においては、鍋底型のパターンを示しており、入社間もない若手の「自己成長」が高いものの、その後20代後半、30代前半となるにつれて、「自己成長」が低くなっており、35-39歳で「自己成長」が最も低い、という結果になっています。

一般従業員の「自己成長」の低さは上司からの成長や学習支援の不足が原因

OurEngageの「自己成長」は、自分の成長感、上司からの成長や学習支援、勤務先による成長やキャリア開発支援の3つの観点から評価されています。そこで、3つの観点それぞれごとに、年代別に一般従業員のスコアを見てみます。

上司からの成長や学習支援が入社直後からの低下幅が大きいことが分かります。つまり、一般従業員の「自己成長」のスコアが鍋底型に低下している原因としては、主に上司からの成長や学習支援の低下が考えられます。入社間もない頃は、日常業務や定期的な面談等の機会に上司から成長のためのフィードバックや学習の機会の提供を受けていたものの、経験年数が長くなるにつれて徐々に少なくなり、30歳代半ばにもなると、成長のためのフィードバックやさらなる成長のための学習の機会が与えられていないという多くの企業での実態が伺われる結果になっています。

30歳代後半から40歳代前半の管理職は上司からの成長や学習支援を十分に受けている

次に、上司からの学習や成長支援を、年代別に一般従業員と管理職と比較してみます。

一般従業員の上司からの学習や成長支援は30歳代後半から40歳代前半に低くなっていますが、管理職は上司からの学習や成長支援を多く感じているという対照的な結果になっています。30歳代後半から40歳代前半の管理職は、役員や部長等の上級管理職から成長のためのフィードバックを受けたり、学習のための支援を受けられている様子が伺えます。

30-40歳代の一般従業員において、上司からの成長と学習の支援を感じられている人ほど仕事のパフォーマンスが高い

ここまでの結果を踏まえると、日本においては一般従業員に対する上司からの成長支援は主に入社間もない20代に集中し、特に30歳から40歳代の働きざかりに不足していると考えられます。これは、ある程度経験を積んだ従業員に対してフィードバックは必要ないと考えられがちであることも理由かもしれません。しかし、OurEngageのデータからは、30-40歳代の一般従業員において、上司からの成長と学習の支援を感じられている人ほど仕事のパフォーマンスが高いことが分かっています。

つまり、「自己成長」が低くなりがちな30-40歳代であっても、上司からの成長と学習の支援を受けられることで成長感を感じることが出来、仕事のパフォーマンスが高まる可能性があると言えます。また、副次的な効果として、組織内で30-40歳代の中堅どころからベテラン従業員が成長感を持ち業務を遂行する姿がその年代以下の若手の従業員にも良い手本となり、組織全体で成長感を感じる従業員が増加するという好影響も考えられます。

ここまでの結果をまとめると、日本における人材の成長が成功するカギは、経験年数が長く一通り業務を遂行出来ていることで上司からのフィードバックの優先度が下がりがちな中堅からベテランの従業員に対しても、経験や熟練度に応じてさらに成長するためのフィードバックや機会を提供することにあると言えるかもしれません。

まとめ

  • 日本企業においては、経験年数の長い一般従業員に対する上司からの成長や学習の支援が不足している可能性がある。
  • 上司からの成長や学習の支援が不足しがちな30-40歳代の従業員においては、上司からの成長や学習の支援を感じている従業員ほど仕事のパフォーマンスが高い。
  • 経験年数の長い従業員に対しても、成長や学習の支援を提供できれば成長感を感じることが出来て仕事のパフォーマンスが向上し、若手社員に対する手本として組織全体に好影響を及ぼす可能性がある。

※OurEngage(アワエンゲージ)は、サイオステクノロジー株式会社にて登録商標申請中です。

エンゲージメントサーベイOurEngageの情報はこちら

https://www.ourengage.jp/

サイオステクノロジー株式会社の情報はこちら

https://sios.jp/

以 上

Follow me!