今年ストレスチェックに追加すべき設問はコレ!

はじめに

今年も10月となりストレスチェックを実施する企業が多いと思います。ストレスチェックでは基本となる57問または80問の設問に加えて、数問の追加設問を用意して実施していることが多いと思います。

たとえば、健康経営優良法人制度への申請に必要なワーク・エンゲイジメントやプレゼンティーイズムに関する設問を追加している企業は多いのではないでしょうか?その他、毎年テーマを決めて数問程度追加設問を実施して分析している企業が多いと思います。今年度のストレスチェックの実施にあたり、追加することをお薦めするのはカスタマーハラスメント経験に関する設問です。

なぜカスタマーハラスメント設問を追加すべきか?

カスタマーハラスメント対策については現在東京都で条例化に向けて検討が進んでおり、国においても法律による規制が検討されている状況です。それを受けて多くの企業においてカスタマーハラスメント対応方針の策定、公表が進んでるのは周知の事実です。

このタイミングでストレスチェックの追加設問としてカスタマー ハラスメントに関する 設問を追加することの目的は、それまで関連付けられることがなかったカスタマーハラスメントを従業員のメンタルヘルスや離職意思と関連づけることが出来るためです。

これまで カスタマー ハラスメントに対する取り組みは主に消費者対応部門 など人事部門以外の部門が担当し、どちらかというとクレームを対応改善に生かす、サービス改善に生かすという観点で実施され、従業員のメンタルヘルスや離職意思への影響 に関してはこれまで検討されてこなかったというのが現状です。

現在、特に対人サービス業では労働力不足が問題となっていますが、パーソル総合研究所の調査でもカスタマーハラスメント経験が離職意思につながることやメンタルヘルスの悪化との関係が示されており、労働力の確保のためにはカスタマーハラスメント対策が必須と言える状況です。

https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/customer-harassment.html 

その際にネックとなるのは、上記のパーソル総合研究所のような調査結果ではなく自社の従業員のデータでカスタマーハラスメントとメンタルヘルスや離職意思との関係を示すデータがないという点です。

そこで、ストレスチェックの追加設問としてカスタマー ハラスメントに対する設問を実施して、従業員の休職や退職との関係が明らかになっている高ストレス者比率との関係を検討することで、根拠をもとに全社でカスタマーハラスメント対策を進めるきっかけともなります。

カスタマーハラスメント設問をどのように作成するか?

ストレスチェックの追加設問としてカスタマーハラスメント経験する際のポイントはいかに少ない設問で自社のカスタマーハラスメント経験を調査するかという点です。対人接客部門は顧客対応で感情的な負担を抱えていることが多いため、ストレスチェックの設問が大幅に増えることで感情的な負担を増やしてしまっては元も子も有りません。自社でカスタマー ハラスメントを対応する部門があれば連携をして、自社で多いカスタマーハラスメント類型をもとに、カスタマーハラスメント経験を問う最短の文言、最小の設問を決めるということが望ましいと思います 。

たとえば、自社で多いカスタマーハラスメント類型として、下記がトップ3だと認識されていたとします。

  • 精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言)
  • 不合理または過剰なサービスの提供の要求
  • 正当な理由のない商品やサービス、金銭の要求、謝罪の要求

その場合、下記のような設問を用意することが考えられます。

 あなたは直近6か月間で、カスタマーハラスメントを経験したことはありますか?
 カスタマーハラスメントとは、顧客や取引先、潜在的な顧客からの、
精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言)、
不合理または過剰なサービスの要求、
正当な理由のない商品やサービス、金銭の要求、謝罪の要求を指します。
 ⇒経験したことがある/経験したことがない

あるいは数問で分けて聞く方式も考えらえます。

あなたは直近6か月間で、顧客や取引先、潜在的な顧客から下記の行為を経験したことがありますか?

1.精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉毀損、侮辱、暴言)
 ⇒経験したことがある/経験したことがない
2.不合理または過剰なサービスの要求
 ⇒経験したことがある/経験したことがない
3.正当な理由のない商品やサービス、金銭の要求、謝罪の要求
 ⇒経験したことがある/経験したことがない

調査結果の分析

分析方法としては下記のようにまずは単純にカスタマーハラスメント経験の有無別に高ストレス者比率との関係を見てみることが考えられます。

なお、対人接客部門とそうでない部門が分けられる場合は、部門別にカスタマーハラスメント経験と高ストレス者比率との関係を検討すると良いでしょう。対人接客部門は若手労働者が多く、女性労働者が多いという特徴がある場合があります。そうした属性の偏りを除いても、なお、つまり対人接客部門に限定しても、やはりカスタマーハラスメント経験者の高ストレス者比率が高いという結果であれば、カスタマ―ハラスメント経験がメンタルヘルスの悪化につながっている可能性を強く示唆していると言えます。

終わりに

調査の分析結果からカスタマーハラスメントと従業員のメンタルヘルスや離職意思との関係が分かったら、人事部門としてもカスタマーハラスメント対策を実施すべきですが、その際には消費者対応部門、営業部門との役割分担が重要です。

顧客対応スキルの向上や、カスタマーハラスメント対応方針の作成等を消費者対応部門、営業部門が担当する場合、人事部門としてはカスタマーハラスメントを踏まえた従業員のセルフケア支援、相談窓口の設置、あるいは現場のマネージャーのラインケアスキルの向上など、人事部門の職掌の範囲で、カスタマーハラスメントによる従業員のメンタルヘルスの悪化や離職意思につながることを防ぐ施策を実施します。

以 上

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