ストレスチェックの新たな基準値に関する研究成果が公開
厚生労働省委託研究の「職業性ストレス簡易調査票に関する新しい基準値の提案」の令和5~6年度総合研究報告書が北里大学医学部公衆衛生学教室のウェブサイトにて公開されております。
https://www.med.kitasato-u.ac.jp/lab/publichealth/osq.html
特にポイントとなるのは、職業性ストレス簡易調査票を用いたストレスチェックにおいて集団分析のツールとして標準的に使われている「仕事のストレス判定図」の係数と計算方法の更新が提案されている点です。
仕事のストレス判定図は、職業性ストレス簡易調査票を用いたストレスチェックで把握される仕事の量的負担、仕事のコントロール、上司の支援、同僚の支援の得点をもとに、その職場で将来疾病休業等が全国平均と比較してどの程度高く発生するかを「総合健康リスク」として評価するツールです。
仕事のストレス判定図で用いられる係数は、『平成 7 年度~平成 11 年度労働省委託研究. 「労働の場におけるストレス及びその健康影響に関する研究」(班長:東京医科大学 加藤正明)』の成果として公表されていますが、30年近く前に推定された係数であること、「全国平均」とされるサンプルの属性の詳細が不明であるといったことが指摘されていました。
今回の報告書では、北里大学の渡辺和広講師を中心として、2015年~2023年度に実施されたEAP等のストレスチェック事業者が顧客に実施したストレスチェックのデータを用いて、仕事の量的負担、仕事のコントロール、上司の支援、同僚の支援から翌年度の高ストレスを多重ロジスティックモデルで予測して検討しています。なお、高ストレス者割合、年代、性別が共変量としてモデルに投入されています。
https://mental.m.u-tokyo.ac.jp/old/hanteizu/Technote.htm
結果として新たに推定された仕事の量的負担、仕事のコントロール、上司の支援、同僚の支援の係数は従来の数値と大きな違いはありませんが、現在の判定図が男女で別の判定図となっており係数も男女で別となっているのに対して、今回提案されているものは男女で共通の係数となっていることが特徴です。この理由として「男女混合の職場がほとんどであり、男女別の判定図の意義があまりない」という考えが示されています。

現在ストレスチェック事業者の中には、男女別の判定図を用いている企業、男性のみの判定図を用いている企業が存在しますが、今回の更新が北里大学から公表させるExcelツール等に反映された場合、現在用いている判定図に関するシステムを男女共通の判定図及び係数を用いるよう改修する必要が出て来るでしょう。
https://mental.m.u-tokyo.ac.jp/old/hanteizu/index.htm
以 上