ストレスチェックの受検率が低いと危険?全員受検が必要な本当の理由

秋になると、多くの企業でストレスチェックが実施されます。ご存知の通り、ストレスチェックの「実施」は企業や地方自治体に義務づけられていますが、従業員や職員にとっての「受検」は任意とされています。しかし、厚生労働省の指針やストレスチェック実施マニュアルでは、従業員全員が受検することが望ましいとされています。

実際の受検率は?

ストレスチェックの受検率は企業、地方自治体などの組織によって大きく異なります。高いところでは受検率がほぼ100%に達する一方で、70%台〜60%台と低い組織も少なくありません

従業員の中には「ストレスを自覚していないなら受けなくてもいいのでは?」と考える方もいるかもしれません。しかし、ストレスチェックの目的は単なるセルフケアではありません。実際には、個人のストレス自覚にかかわらず、全員が受検することが重要です。その理由について、以下で詳しく解説します。


なぜ全員が受検すべきなのか?

1. 集団分析の正確性を保つため

ストレスチェック後、企業や地方自治体といった事業者は個人の結果を見ることはできませんが、部署単位や属性別などの「集団分析結果」は把握できます。この集計データは、事業者が現在努力義務とされている集団分析や職場環境の改善に取り組むための貴重な情報源となります。

しかし、仮に「ストレスが高い人ほど受けない」または「ストレスが低い人ほど受けない」といった受検者に偏りがあると、集団分析結果は現実を反映しないものになります。そのような偏ったデータをもとに職場環境改善施策を立てても、的外れな改善策に終わる恐れがあります

2. 経年比較を正しく行うため

ストレスチェックは毎年実施されるため、前年との比較(経年比較)を行うことが一般的です。この比較を統計的に正しく行うためには、「対応のあるt検定」という方法を使う必要があります。

この検定では、前年と今年の両方で受検した同じ個人のデータが必要になります。しかし、受検率が低い企業では、2年連続で受検している従業員が非常に少ないケースがあります。この場合、分析に使えるサンプル数が限られ、「そのサンプルが本当に組織全体を代表しているか」が疑わしくなります。

そのため、正確な経年比較や職場環境の変化を把握するためには、毎年多くの従業員が継続的に受検することが不可欠なのです。


まとめ

ストレスチェックは、従業員一人ひとりのセルフケアの機会であると同時に、企業や地方自治体といった事業者が組織全体のメンタルヘルス状況を把握し、職場環境を改善するための重要な機会となります。

受検が任意であるとはいえ、受検率が低いとその意義が損なわれてしまいます。集団分析の正確性を確保し、経年変化を正しく追うためにも、なるべく多くの従業員が毎年受検することが必要不可欠です。事業者としても、その意義を従業員に正しく伝え、なるべく100%近い受検率となるような受検勧奨を実施することが求められます。

以 上

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