50名未満事業場でのストレスチェック実施マニュアル素案が公開

現在厚生労働省で令和10年度内に義務化される50名未満事業場でのストレスチェックの実施マニュアルが検討されています。当該マニュアルは、ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会の内部に設置された「小規模事業場ストレスチェック実施マニュアル」作成ワーキンググループ において素案が検討され、ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会での議論を経て令和7年度中の完成が目標とされています。

2025年11月10日に開催された第四回の作成ワーキンググループでは、これまで非公開で検討されてきたマニュアルが「小規模事業場ストレスチェック実施マニュアル」(案)として公開されています。

https://www.mhlw.go.jp/content/11303000/001592574.pdf

今回はこのマニュアルを現在実施が義務化されている50名以上の事業場を想定した「労働安全衛生法に基づく ストレスチェック制度 実施マニュアル」www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei12/pdf/150507-1.pdf)との対比で検討してみたいと思います。

ストレスチェックの調査票

50名未満の事業場においても、現行の57問の職業性ストレス簡易調査票が推奨されており、23問の短縮版は集団分析の観点から推奨されていません。

出所)出所)厚生労働省
ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 
「小規模事業場ストレスチェック実施マニュアル」作成ワーキンググループ  第4回資料

労働者からの意見聴取

ストレスチェックの実施にあたって事業者は、ス、労働者が安心してストレスチェックを受検できるように、実施体制、実施方法等について、関係労働者の意見を聴くことが望まれており、50名以上の事業場においては設置が義務化されている(安全)衛生委員会にて労働者を交えて調査審議を行うことが推奨されています。50名未満の事業においては(安全)衛生委員会の設置が義務とされていないことから、「小規模事業場ストレスチェック実施マニュアル」では「必ずしも会議体の構成をとる必要はありませんが、それぞれの事業場の実情に応じて、実効性が確保できる方法により、できるだけ様々な現場や立場の労働者から意見を聴くことが重要です。」とされており、衛生推進者等の50名未満事業場でも設置されている担当者が意見聴取の役割を担うこと等が例示されています。

ストレスチェックの実施主体

小規模事業場ストレスチェック実施マニュアル」では「労働者数 50 人未満の事業場においては、原則として、労働者のプライバシー保護の観点から、ストレスチェックの実施を外部機関に委託することが推奨されます。外部機関には健診機関も想定されます。」として、事業者は、ストレスチェックの委託先の選定に当たっては、事前に外部機関から「サービス内容事前説明書」を作成・提出してもらい、その内容を確認します。プライバシー保護等の観点から外部委託を原則としています。

それに伴って委託先のサービス内容や態勢の確認を求める規定が追加されています。具体的には「事業者は、ストレスチェックの委託先の選定に当たっては、事前に外部機関から「サービス内容事前説明書」を作成・提出してもらい、その内容を確認します。事業者は、ストレスチェックの委託先の選定に当たっては、事前に外部機関から「サービス内容事前説明書」を作成・提出してもらい、その内容を確認します。」といった外部委託先にサービス内容事前説明書の提出を求める記述が追加されています。このサービス内容事前説明書は「小規模事業場ストレスチェック実施マニュアル」の巻末資料の1つとしてモデル例が示されていますが、現行「労働安全衛生法に基づく ストレスチェック制度 実施マニュアル」に存在する外部委託先に対するチェックリストよりもかなり詳しい内容となっていることが特徴です。

出所)厚生労働省
ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 
「小規模事業場ストレスチェック実施マニュアル」作成ワーキンググループ  第4回資料

面接指導の実施

50名以上の事業場規模を想定した「労働安全衛生法に基づく ストレスチェック制度 実施マニュアル」では産業医が存在するので産業医への委託が原則とされていたところ、「小規模事業場ストレスチェック実施マニュアル」が想定する50名未満事業場では医師の面接指導は地域産業保健センターが無料で実施することが出来るとされています。

出所)厚生労働省
ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会 
「小規模事業場ストレスチェック実施マニュアル」作成ワーキンググループ  第4回資料

ただし、「地産保は、企業規模として50人未満の小規模事業場を優先して支援を提供しています。いわゆる大企業の営業所等である小規模事業場で、本社等で選任されている産業医等の協力を得られるような場合は、ご利用いただけないことがあります。」と記述されているため、現状の課題となっている大企業の支店等で50名未満の事業場において実施する場合の面接指導の外部委託先の確保の問題の解決は難しい可能性があります。

集団分析

「集団分析の具体的な方法は、使用する調査票により異なりますが、国が標準的な項目として示す「職業性ストレス簡易調査票」(57 項目)又は簡略版(23 項目)を使用する場合には、これに関して公開されている「仕事のストレス判定図」によることが適当です。」とされており、50名以上の事業場と同様の方式が推奨されています。なお、「集団分析では、集団分析結果については、集計・分析の単位が 10 人を下回る場合には、個人が特定されるおそれがあることから、原則として集団分析結果の提供を受けてはいけません。」とされている点は、現状のストレスチェック制度Q&Aでは、個人が特定されない方法であれば分析して良いとなっており整合性が取れていない点は気になる点です。

冒頭に述べた通り、今後「小規模事業場ストレスチェック実施マニュアル」作成ワーキンググループ において素案が検討され、ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策に関する検討会での議論を経ることになりますが、大筋はワーキンググループの素案通りとなることが想定されるため、中小企業や小規模事業場向けにストレスチェックを提供する事業者は本素案の内容を把握し、態勢整備を開始することが望まれます。

以 上

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