ハラスメント調査は匿名と実名どちらが良い?メリット・デメリットを徹底解説

ハラスメント調査における実名・匿名の使い分けについて

今回は、ハラスメント調査を実名で実施する場合と、匿名で実施する場合の使い分けについて考えてみたいと思います。

部下を怒鳴りつけている上司のイラスト

まず、ハラスメント調査を実名で実施する場合には、「答えづらい」というデメリットがあります。しかし一方で、回答に責任を持ちやすくなるというメリットもあります。また、回答者が実際にハラスメントを受けていると回答した際には、実施者がその内容を把握して、具体的な対応を取ることが可能です。

これに対して、匿名で実施する場合は、自由に意見を述べやすく、回答のハードルが下がるという利点があります。しかし、同僚や上司を貶めたいといった不当な目的で虚偽の回答をするリスクも否定できません。また、実際に被害を訴える回答があっても、誰が被害者なのか特定できないため、個別の対応が難しいという課題もあります。

こうしたメリット・デメリットを踏まえると、調査内容に応じて実名回答と匿名回答を使い分けることが重要だと考えられます。ハラスメントと一口に言っても、その範囲は非常に広く、法的に明確にハラスメントと認定されるものから、グレーゾーンと呼ばれる微妙な行為、さらには「インシビリティ(無礼な言動)」といった礼節を欠く行為まで様々です。そのため、目的に応じた調査方法を選ぶことが理想的です。

実名で実施すべき範囲は、明らかにハラスメントに該当する行為です。ガイドラインなどを参考に対象行為を明確にし、該当する場合は発生場所や時間、具体的な内容を自由記述してもらう形式が望ましいでしょう。回答数は少数にとどまる傾向がありますが、個別のケースごとにコンプライアンス部門などが迅速に対応できる体制を整えることが重要です。

一方、匿名での実施が望ましい範囲は、グレーゾーンのハラスメントやインシビリティといった、ハラスメントに至る前段階の行為です。例えば、上司が部下に対して不機嫌な態度を取り続ける、挨拶を無視する、特定の部下だけをえこひいきするといった行為が挙げられます。また、上司が部下を繰り返し私的な飲み会に誘う、部下の趣味や価値観を否定するなどもグレーゾーンに含まれます。

こうした内容については匿名で自由に回答してもらい、組織単位で集計・分析することで現状を把握します。その結果、組織全体としてあるいは特定の部署でグレーゾーンや無礼な行為が多い場合には、組織としてそうした行為はハラスメントにつながりかねない行為であることや、健全な組織風土を損なう行為であることを研修や人事部門やコンプライアンス部門部門からの情報発信を通じて周知、徹底することが効果的です。

まとめとして、ハラスメント調査は実名・匿名のいずれか一方に限定するのではなく、目的に応じて使い分けることが重要です。明確なハラスメント行為を把握するためには実名調査が、グレーゾーンや組織風土の改善を目的とする場合には匿名調査が、それぞれ効果的であると言えるでしょう。

以 上

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