心理統計学を学ぶ際の落とし穴その1「母集団と標本の区別」

最近統計検定など統計学の学習がブームになっており、公認心理師試験を目指す心理職の方以外にも統計学を学び始めた方をお見かけすることが多くなりました。その中で、「平均、分散、標準偏差、仮説検定、、、」と濃淡なく進めた結果、丸暗記になってしまい、結果、過去問の類題しか解くことができないという方を見かけます。そうならないためには、まずは統計学の基本をしっかり自分の頭で納得するまで理解することが重要です。

統計学の基本の中で大事なポイントはいくつかあるのですが、そのうちの1つが「母集団と標本の区別」です。この部分に理解には多くの時間をかけることをお勧めします。理解するためには、味噌汁を作る場面を思い浮かべると良いと思います。

味噌汁を途中まで作って、「濃い」か「薄い」のか味を見るためにはどうするでしょうか?「鍋全部の味噌汁を全部飲んでみる」という奇特な方もいるかもしれませんが(笑)、通常は、お玉で一部をすくって味見をするはずです。この味見をする部分が、まさに統計学の「母集団と標本の区別」に該当します。鍋に入っている味噌汁全部が母集団、味見をするためにお玉ですくった一部の味噌汁が標本という訳です。

 

統計学の世界では、母集団と標本の関係を確率の言葉で表現します。これがなぜ良いのかというと、標本から母集団について推測を数学的に行うことが出来るようになり、誰が行っても同じ結論を導くことが出来ます。たとえば、母集団として正規分布を想定すると、「母集団が正規分布の場合には、母集団と標本との間にはこういう関係がある。従って、こういう標本が得られたのであれば、母集団はこんな形じだろう」という推測を数学的に行うことが出来ます(実際には統計パッケージを使って標本から母集団への推測を容易に行うことが出来ます)。

この母集団と標本の関係を利用して標本から母集団について推測するのを「推測統計」と統計学の世界では言っています。逆に、標本と母集団という関係を想定せず、単に得られたデータの特徴を記述する、先ほどの味噌汁の例であれば、鍋全体の味噌汁を飲んでしまって味噌汁の味を知るのを統計学の世界では「記述統計」と言っています。

それでは、これまで説明した母集団と標本の関係が心理学とどう結びつくのでしょうか?学生時代に心理学を学ばれた方は、実験、実習、演習という形で友人の大学生を対象として心理学実験や調査を実施した経験のある方が多いかと思います。この実験や調査で得られた結果は、たとえば「○○大学の大学1年生に○○年▲▲月××日のストレス度」ですから本来はその場限りのものです。この結果を、たとえば「日本の大学生」という母集団から得られた標本とみなすことによって、実験や調査で得られた結果を、その場限りの結果ではなく、より一般的に「たとえば、日本の大学生のストレスの平均は○○くらい」と推測出来るようになります。以下にこれまでの内容、味噌汁の味見、統計学、心理学の関係をまとめました。

もちろん、「たまたま大学生の友人に声をかけて調査に協力してもらったのに、日本の大学生一般に一般化して良いのか?」という疑問もあるかと思います。その疑問については、心理統計学では、「妥当性」という分野で詳しく扱われています。

 

多くの統計学の教科書では、初めに記述統計に触れて、その後推測統計に触れるのですが、記述統計の部分で、平均、分散、相関係数、回帰分析と出てきて、また推測統計で、平均、分散、相関係数、回帰分析と出てきて混乱する方もいるかもしれません。記述統計では、鍋全部の味噌汁を飲んでその鍋の味噌汁について「辛い」「薄い」と言っていて、推測統計では、お玉で味見した1すくいをもって、鍋の味噌汁全部について「辛いようだ」、「薄いようだ」と推測しているというイメージをもって学んで頂ければと思います。

以 上

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