第25回日本産業ストレス学会に参加しました

去る12月8日から9日にかけて静岡県静岡市にて開催されました第25回日本産業ストレス学会に参加しましたので内容をご報告します。学会への主な参加者は、研究機関の研究者、産業医、保健師、心理職、人事担当者で、主催者発表によれば今大会の参加者は2日間で延べ800名超となり、盛況のうちに全日程を終えました。

 

今大会には、弊社からは代表取締役の宮中大介が参加し、筆頭発表者として1演題、共同発表者として2演題発表を行いました。発表を行った演題の内容は、集団分析に関するツールの提案、職業性ストレス簡易調査票の中国語版の信頼性と妥当性の検証、ハラスメントと面接指導申し出の関連についてでした。

一般演題としては合計49演題が発表されました。発表された研究テーマを抄録内容をもとに弊社の判断で分類したところ、下記のように、休業、職場復帰関連のテーマが9件と2割近くを占め、最も多くなりました。

 

休業、職場復帰関連のテーマには、ストレスチェック結果と休業との関連を分析した研究、産業保健スタッフの休業者へのフォロー方法とその後の再休業の関連の分析、自社の休復職対応体制の紹介等が含まれていました。本学会に多く含まれる産業医や保健師といった産業保健スタッフが日頃接する事の多い休復職事例を研究テーマとして取り上げた結果ではないかと推測されます。

次に多かったのが、特定の職業や年代、業種のストレスに関連するテーマです。興味深いものとしては、国会議員秘書、薬剤師等のストレス状況を分析したものがありました。このテーマでの発表者としては研究機関の研究者や大学院生が多い傾向にありました。

その次に多かったテーマは、睡眠とメンタルヘルスの関連を検討した発表で、睡眠の質や、睡眠時間とメンタルヘルスの関連を検討した研究が見られました。

ストレスチェック集団分析に関するテーマの演題も多く、自社での集団分析の取り組みや、集団分析から見えてきた高ストレス者の傾向などの分析がありました。産業医や保健師に加えて集団分析実施実績の豊富な外部機関による発表が多い傾向にありました。

全体的な傾向として、ストレスチェック制度施行2年目ということもあり、義務化前に開催された数年前の学会に比べて、自社のストレスチェックデータを用いた産業保健スタッフによる研究が多くなった印象を受けました。

 

一般演題以外の教育講演やシンポジウムでは、専属産業医、嘱託産業医、企業内保健師、企業内心理職、外部機関等、それぞれの立場からのストレスチェックや日頃のメンタルヘルス対策への取り組みについて話題提供が多くありました。以下、特に印象的だった点を2つ挙げます。

第一は、ストレスチェック制度の効果的、実質的な運用、特に面接指導においては、職場の状況や従業員一人一人の情報を持っている保健師、人事、職場の管理職といった関係者と、産業医がうまく連携することが極めて重要であるという点です。面接指導の主訴の多くが職場の対人関係に由来するものであるというデータが示されたり、ハラスメント等本人からの情報のみでは適切な対処が難しかった面接指導の事例が紹介されていました。

第二は、産業保健スタッフのリソースが潤沢な大手企業と、そうではない中小~中堅企業でストレスチェックやメンタルヘルス対策の実態に大きな差が有るという点です。今回は静岡開催ということもあり、トヨタ自動車、東海旅客鉄道、ブラザー工業といった東海地方の大企業の産業医や保健師による話題提供が多くあり、産業医と保健師がチームとしてケース対応する、両者が情報を共有しつつも役割を使い分けているという話題提供がありました。一方で、嘱託産業医を務める複数の話題提供者からは、中小~中堅企業では、義務であるストレスチェック実施への投資さえ経営者を説得するのがかなり難しい、月に数時間訪問する嘱託の立場で保健師が居ない企業の場合には面接指導で職場に原因があると分かっても踏み込んだ職場介入は難しいという話題提供がありました。また、地元で複数の中小事業場を嘱託産業医として担当する話題提供者からは、50名未満の事業場でのストレスチェックや面接指導の実施には行政からの助成があるが、50名~100名程度の事業場についても何らかの助成が必要ではないかという問題提起がありました。

弊社としましては、今回の学会で得た現場の課題感、研究成果や実事例を参考に、高品質かつ効果的なソリューション開発に努めて参ります。

 

以 上

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