厚生労働省主催「職場のメンタルヘルスシンポジウム」に参加しました

12月4日に東京都新橋のヤクルトホールにて開催されました厚生労働省主催の「職場のメンタルヘルスシンポジウム」に参加しましたので、内容を共有いたします。なお、本シンポジウムの講演内容については12月中に厚生労働省のWEBサイト「こころの耳」(http://kokoro.mhlw.go.jp/)にて公開される予定とのことです。

本シンポジウムは、基調講演、合計4社からの職場環境改善の実践事例、4社の担当者によるパネルディスカッションという構成で実施されました。基調講演では、独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所の吉川徹氏より、職場環境改善に関する研究成果、集団分析結果の活用方法、職場環境改善の典型的な進め方について解説がありました。職場環境改善の効果が学術研究によっても裏付けられていることや、職場環境改善が費用対効果の面でも優れていることが紹介され、大変興味深い内容でした。

【事例1】オムロン株式会社

製造業の営業拠点事業所での健康相談室所属保健師主導の取り組み事例です。

保健師がファシリテーターとなり、職場環境改善のためのアクションプランを作成するためのグループディスカッションを行う等の取り組みが紹介されました。従業員約900人に対して常勤保健師3名という比較的産業保健スタッフのリソースが潤沢な点を活かした手厚い取り組みが特徴でした。

グループワーク上の工夫として、模造紙上のリンゴの木の絵の上に職場の強みを赤い付箋(成熟したリンゴ)、弱みを黄色の付箋(熟していないリンゴ)として貼っていくというアイデアが紹介されましたが、単に付箋で貼り出した場合に比べて、結果をポジティブに受け止めやすくするための良い工夫と感じました。

なお、職場環境改善活動への参加を希望制としているため、課題のある部署が参加しない傾向にある、ファシリテーションも含めて産業保健スタッフの負担が重く、今後も継続的な取り組みとするためには工夫が必要といった現状の課題感についても言及がありました。

【事例2】カルビーポテト株式会社

大企業関連会社で500名規模の農作物の製造加工販売業での人事部門主導での取り組み事例です。

「心とからだの健康づくり計画」を中心に取り組んでいる点、ストレスチェック結果だけではなく従業員意識調査や現場での面談結果等も考慮して現状を把握している点、研修等についても実施は外部機関に委託しても自社の事情に合わせて短縮したものを実施する、といった点が特徴的でした。

また、人事部門が現場に積極的に出向くことにより、現場の実情を知り、現場の従業員と信頼関係を構築することの重要性を強調しておられたのが印象的でした。

【事例3】株式会社日立製作所

顧客先への常駐型システムエンジニアが多い職場での保健師中心の取り組み事例です。

物理的に一堂に会することが困難な遠隔地で勤務する従業員のためにTV電話会議システム等を活用する等ICT企業らしい取り組みが特徴的でした。既存の職場改善ヒント集に自社事例を追加したオリジナル職場改善ヒント集を作成したり、安全衛生委員会での職場改善の報告者を保健師から安全衛生担当課長に変更して質問や意見交換を活性化する等、事業者の自律した活動の支援を意識した仕掛けが印象的でした。

【事例4】株式会社フジクラ

健康経営にも注力する人事部門による取り組み事例です。

職場環境改善の目的を従業員が活き活きと生産性高く仕事をする状態と設定し、常にその目的に立ち返って考える姿勢が特徴的でした。健康診断の結果や残業時間等とストレスチェック結果を結びつけて統計分析を行う等の取り組みが印象的で、講演中には大変興味深い様々なデータ分析結果が共有されました。

パネルディスカッション

パネルディスカッションは、事前に参加者から寄せられた質問に事例を発表した4社の担当者が質問に回答する形で行われました。

主な質問と回答について抜粋して紹介します。

Q:職場環境改善を悪者探しにせず、前向きな取り組みとするには?

  • マイナスをプラスにするよりもプラスをさらにプラスにするほうが必要な労力が少ないことを強調する。
  • 製造業では日ごろのQC活動の一環とすることで自然な取り組みとすることが可能。

Q:高ストレス職場への対処はどうすれば良いか?

  • その原因を把握し、その原因に対して真に権限・責任のある人物にアプローチする。
  • 事業環境の変化が激しい中で同じ社内でも花形とそうではない部署ができてしまい、後者が低モチベーションの部署となることがある。経営層からメッセージを発する等、マネジメント上の課題として対処する必要がある。

Q:担当者として苦労している点は?

  • 職場環境改善の効果の評価が難しい、特に組織の構成員が異動で変更になる場合に職場環境改善の効果をどう評価すればよいか決定打がない。
  • 保健師としても組織の仕事の内容、顧客像、ビジネスモデル等相当勉強しないと有効にアプローチできない。
  • 巨大企業の場合には、保健師としてどの人物にアプローチすれば社内を動かせるのかが分かりにくい。
  • 職場環境改善は現場の従業員の時間を使うため、忙しい現場からの反発も想定される。人事部門等の職場環境改善の実施主体部署が反発を受けてぶれないようにそうした反発と対処を予め想定しておくことが必要。

最後にパネルディスカッションのコーディネーターを務めた吉川氏より、データの活用、各社の事情に応じた各社各様のテーラーメイドの施策、担当者がミッションをもって進めていることが今回の事例企業4社の特徴であると総括されました。

シンポジウムで話題に上りました、職場環境改善のためのデータ活用、効果の評価、マネジメントとしてのメンタルヘルス対策については弊社もお客様よりもご相談をいただくことの多いテーマです。そうしたニーズにしっかりとお応えすべく一層サービス開発に注力して参ります。

以 上

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