2018年度公認心理師試験予想問題「労働安全衛生法」

先日公認心理師試験の出題基準(ブループリント)が公表され、9月実施の試験本番まで待ったなしとなりました。今回は労働安全衛生法の理解について確認する問題を予想問題として作題しました。

労働安全衛生法および関連法令(2018年3月13日時点)に照らして適切な選択肢を1つ選択せよ。

①常時50人以上の労働者を使用する事業場では業種を問わず産業医および衛生管理者の選任、衛生委員会の設置が義務である。

②厚生労働大臣は、都道府県労働局長の意見をきいて、労働災害の防止のための主要な対策に関する事項その他労働災害の防止に関し重要な事項を定めた計画(以下「労働災害防止計画」という。)を策定しなければならない。

③出席者の自由な議論を促進する趣旨から衛生委員会には人事権を持たない者のみが出席することとされている。

④事業者は、労働者に対し、医師による健康診断(第六十六条の十第一項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならないが、労働者の権利を尊重する趣旨から労働者の受診は努力義務とされている。

 

如何でしょうか?

労働安全衛生法はもともと労働基準法の中の安全衛生に関する規定が分離独立して出来た法律です。労働安全衛生法(国会で決まる法律)>労働安全衛生法施行令(政府が発出する命令)>労働安全衛生規則(厚生労働大臣が発出する命令)という階層構造になっており、上位の法令で大枠・方針を決め、下位の法令ほど詳細を定めるという形式になっています。

労働安全衛生法、労働安全衛生法施行令、労働安全衛生規則は毎年のように改正されており、社会保険労務士試験であれば毎年の改正事項を把握しておく必要がありますが、公認心理師試験とりわけ初回の試験では労働安全衛生法のうちメンタルヘルスに関わりのある部分や当面変更の予定がない原則的な部分についての理解を問う問題が出題されると考え本題を作題しました。

選択肢①

選択肢①は〇です。適切です。

産業医は事業場の労働者の安全衛生を守るために、医学的知識を活かして事業者に助言したり労働者の面接指導を行うポジションです。ストレスチェックの実施者となることも期待されています。労働安全衛生法第十三条は下記のようになっています。

第十三条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。

上記で参照されている政令である労働安全衛生法施行令では下記のようになっています。産業医の選任は常時50人以上の労働者を使用する事業場で義務となります。

(産業医を選任すべき事業場)

第五条 法第十三条第一項の政令で定める規模の事業場は、常時五十人以上の労働者を使用する事業場とする。

衛生委員会は事業場の衛生管理を行うための調査審議を労使で行うための会議の場です。衛生委員会については労働安全衛生法第十八条に下記の規定が存在します。

(衛生委員会)

第十八条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、衛生委員会を設けなければならない。

労働安全衛生法第十八条第一項の参照先の政令の労働安全衛生法施行令では下記の規定があります。衛生委員会の設置についても常時50人以上の労働者を使用する事業場で義務となります。

第九条 法第十八条第一項の政令で定める規模の事業場は、常時五十人以上の労働者を使用する事業場とする。

衛生管理者は、労働者の衛生管理を行う専門知識を持った実務担当者です。なお、医師、保健師や看護師といった医療系の国家資格を必須とする資格ではなく、人事総務担当者が講習・試験を受けて資格要件を満たすこと一般的です。労働安全衛生法第十二条に下記の規定があります。

第十二条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、都道府県労働局長の免許を受けた者その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業場の業務の区分に応じて、衛生管理者を選任し、その者に第十条第一項各号の業務(第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除く。)のうち衛生に係る技術的事項を管理させなければならない。

 対応する労働安全衛生法施行令は下記です。衛生管理者についても常時50人以上の労働者を使用する事業場で選任が義務となります。
(衛生管理者を選任すべき事業場)
第四条 法第十二条第一項の政令で定める規模の事業場は、常時五十人以上の労働者を使用する事業場とする。

したがって、選択肢①は適切な内容ですので〇になります。常時50名以上の労働者を使用するの事業場であれば業種を問わないことにも注意が必要です。ちなみに50名以上の事業場に関しては、製造業や鉱業などの危険性のある業種に該当する場合や一定以上の人数規模となると他にも産業医や衛生管理者の選任すべき人数が増えたり安全委員会の設置が義務付けられたりと事業者に求められる負担が重くなります。常時雇用する労働者数が50人未満と50名以上で事業場に求められる体制が大きく異なることの理解が重要です。

労働安全衛生体制に関しては東京都産業保健総合支援センターが毎年発行している「労働衛生のハンドブック」が参考になります。

http://www.tokyos.johas.go.jp/handbook.html

直近では下記の平成29年版が最新です。

http://www.tokyos.johas.go.jp/pdf/handbook/H29handbook.pdf

上記ハンドブックでは産業医については42ページ、衛生委員会(および安全委員会)に関しては38ページ、衛生管理者については40ページにおいてそれぞれ職務内容、選任義務のある事業場規模等についてまとめられていますので、ご参考下さい。

なお、産業医と衛生管理者を選任したら所轄の労働基準監督署に届け出をすることも知っておいて損はないと思います。

http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei36/dl/20_01.pdf

選択肢②

選択肢②ですが、厚生労働大臣は都道府県労働局長の意見ではなく労働政策審議会の意見を聞く必要がありますので×です。

第六条 厚生労働大臣は、労働政策審議会の意見をきいて、労働災害の防止のための主要な対策に関する事項その他労働災害の防止に関し重要な事項を定めた計画(以下「労働災害防止計画」という。)を策定しなければならない。

労働政策審議会は労働安全衛生に関するいわゆる有識者(研究者、産業医、人事、労働組合の代表者、法律家等)で構成されている審議会で厚生労働大臣の諮問機関となっています。また、「労働災害防止計画」については5か年を1単位として策定されており、第13次の「労働災害防止計画」が2018年4月から開始したことは先日弊社ブログでもご紹介した通りです。

選択肢③

選択肢③は、「出席者の自由な議論を促進する趣旨から衛生委員会には人事権を持たない者のみが出席することとされている」という規定はありませんので×です。

労働安全衛生法第十八条の衛生委員会に関する規定を見てみると衛生委員会の出席者については下記の通りとなっています。

(衛生委員会)
第十八条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、衛生委員会を設けなければならない。
(略)
2 衛生委員会の委員は、次の者をもつて構成する。ただし、第一号の者である委員は、一人とする。
一 総括安全衛生管理者又は総括安全衛生管理者以外の者で当該事業場においてその事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者のうちから事業者が指名した者
二 衛生管理者のうちから事業者が指名した者
三 産業医のうちから事業者が指名した者
四 当該事業場の労働者で、衛生に関し経験を有するもののうちから事業者が指名した者
法律用語で少し難しいのですが、衛生委員会には事業場の代表者、衛生管理者、産業医、労働者が出席するということです。
実務上は事業場の代表者としては、本社であれば人事部長あるいは総務部長、支社や工場であれば支社長や工場長が出席することが一般的です。労働者としては労働組合員や衛生委員に指名された労働者が出席していることが多いと思われます。
衛生委員会は毎月1回1時間~2時間程度開催され、社内のインフルエンザ予防、健康診断、メンタルヘルス対策といった議題に関して報告、議論等が行われます。
 ちなみに、製造業や鉱業といった危険が伴う業種の場合は、業種と常時使用する労働者の数に応じて安全委員会を設置することも求められますが、衛生委員会と安全委員会の両方を設置する事業場の場合は、安全衛生委員会として合同して行うことが出来ます。そのため一定規模以上の製造業などでは安全衛生委員会が開かれ、工場での労災事例の報告や対策の検討と合わせて従業員のメンタルヘルス対策等安全と衛生の両面での対策が検討されていることが一般的です。

選択肢④

選択肢④は、医師による健康診断の労働者の受診は努力義務ではなく義務ですので×です。

労働安全衛生法は主に事業者に労働者の安全衛生を守るための義務を課した法律ですが、労働者の協力が必要な場合には労働者に義務を課す規定もあります。医師による健康診断もその一例です。

第六十六条を見てみますと第五項に「事業者が行なう健康診断を受けなければならない。」とあるように受診は義務となっています。

(健康診断)
第六十六条 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第六十六条の十第一項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。
(略)
5 労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師又は歯科医師の行なうこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。

なお、同じく労働安全衛生法で定められるストレスチェックに関しては労働者に受検の義務も努力義務もないことは先日の「ストレスチェック制度に関する予想問題」で解説した通りです。ただし、受検する必要がないということではなく、「メンタルヘルス不調者にまで受検を強制することは制度の趣旨に反する」との考え方から受検の義務あるいは努力義務規定が削除されたという理解が重要です。

ここまで労働安全衛生法の規定をもとにした予想問題と解説を行いましたが、現実と理想のギャップというのはどこの世界でもあり、労働安全衛生法で事業者に求められる産業医の選任、衛生委員会の設置、衛生管理者の選任といった義務事項が50名以上の事業場のすべてで遵守されている訳ではない、形だけの運用に留まっている事業場も多いという実情は公認心理師になられる方にも現実問題としてはご理解頂ければと思います。

以 上

 

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