誤答パターンからの公認心理師試験対策(産業・統計)⑦

6月末に公開した公認心理師試験対策練習問題(産業・統計)に対する回答を分析し、誤答パターンから公認心理師受験生が理解しておくべきポイントの解説を行います。今回は、統計・研究法分野の第5問目、全10問の最後の問題の解説になります。

今回はデータの要約、視覚化について、教員と学生との対話形式の問題です。試験本番でも、正しいあるいは不適切な選択肢を選択する問題以外に、このような事例形式の問題が出題される可能性がありますが、正確な知識があれば解ける問題ですので、落ち着いて慌てず回答しましょう。

 

教員と学生の研究に関する会話を読んで、最後の学生の発言に対する教員のアドバイス(A)として適切でない選択肢を選択しなさい。

教員 Aさん、先週の課題は進んでいるかな?

学生A 少し悩んでいます。心理尺度Aの測定値は量的変数なのですが、参加者間のばらつきが大きく、ヒストグラムを描いてもきれないな山形の分布にならないのです。

教員 なるほど。極端に値が小さかったり大きかったりする外れ値の影響には注意しないといけないね。

学生A はい、まずはデータを視覚化して、代表値や散布度を計算して分布の特徴を見てみたいと思っています。

教員 (A)

<選択肢>

①外れ値の影響が懸念されるデータの場合は、平均値よりも外れ値の影響を受けにくい代表値の指標である中央値も計算してみると良いでしょう。

②外れ値の影響が懸念されるデータの場合は、散布度を求める際にも、標準偏差よりも外れ値の影響を受けにくい四分位偏差も計算してみると良いでしょう。

③箱ひげ図では、平均値や標準偏差、四分位偏差、中央値も視覚的に把握できるのでお勧めです。

④外れ値の影響が懸念されるデータの場合は、他の量的変数とのピアソン相関係数を求める際にも、外れ値が影響する懸念があります。

⑤母集団が正規分布と言えそうにない場合には、ノンパラメトリックな手法の適用を検討してみましょう。

 

回答の分布をみると、選択された選択肢がばらついていることが分かりますが、特に、選択肢②と選択肢⑤を選択して誤答した方が多く、正答の選択肢③を選択した方の割合は三番目になりました。「適切でない」選択肢を選択するという設問を読み違えて適切な選択肢を選択してしまった方も一定割合で存在した可能性があります。

選択肢を順に検討します。

①ですが、正しい内容です。中央値は、データを大きさの順に並べた時に、ちょうど真ん中に位置するデータの値です。中央値はデータの値そのものではなく順位を用いる指標ですので、平均値よりも外れ値の影響を受けにくい指標です。

②ですが、四分位偏差は、(第3四分位数-第1四分位数)/2で計算され、分布のひろがりを表す散布度に含まれる指標です。なお、第3四分位数は小さいほうから75%のデータ、第1四分位数は小さいほうから25%のデータを表します。第3四分位数、第1四分位数といったデータの順位にもとづく数値を用いて、分布のひろがりを計算しますので、すべてのデータを用いて計算する分散や標準偏差と比較して、外れ値の影響を受けにくい指標と言えます。

③は、箱ひげ図では、平均値や標準偏差は視覚的に把握できませんので、不適切な内容です。参考までに、今回の回答データをもとに、心理職としての経験年数(通算)別に、得点の箱ひげ図を描いてみました。箱ひげ図は、図のように、箱の横線の位置、箱から伸びる髭の長さで、データの分布の特徴を表現します。箱の底にあたる横線は、第1四分位数(小さいほうから25%のデータ)、箱の内部の真ん中の横線は中央値、箱の上の横線は第3四分位数(小さいほうから75%のデータ)の位置を視覚的に表します。箱から上下に伸びる髭は、それぞれ最大値と最小値まで伸びており、最大値と最小値の位置を視覚的に表します。なお、髭の長さを箱の長さの1.5倍とする流儀もありますが、いずれにしても、箱ひげ図から平均値や標準偏差を視覚的には把握することが出来ません。

また、四分位偏差は、(第3四分位数-第1四分位数)/2ですので、箱の縦の長さの半分の長さが四分位偏差に対応しますので、箱ひげ図から視覚的にその大きさを把握することが出来ます。

箱ひげ図によってデータを視覚化することで、上の図からは、心理職としての経験年数が長いほど回答者の得点の中央値が高い傾向にあること、心理職としての経験年数が3年以上10年未満の方は、外れ値を除けば、ばらつきが非常に小さく大半の方が3点か4点であること、心理職としての経験年数が20年以上の回答者の方は、極端な高得点者、低得点者はいないが、四分位偏差で見た場合には、回答者内でのばらつきは大きいと言えるでしょう。

④は正しい内容です。ピアソンの積率相関係数の計算に、分散の仲間である共分散と、分散の正の平方根である標準偏差が使われることを知っていれば、分散と標準偏差が外れ値の影響を受けやすいのであれば、ピアソンの積率相関係数も影響を受けやすいと判断できると思います。

⑤は正しい内容です。正規分布に限らず、母集団に特定の分布(たとえば正規分布)を仮定できる場合はそれに対応した方法を適用しますが、そうでない場合は、特定の分布に依存しないノンパラメトリックな方法を適用することを検討します。

 

以 上

 

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