令和5年度健康経営度調査のポイント

はじめに

ここ10年で注目度が高まった言葉の一つに「健康経営」があると思います。注目度を高める役割の一翼を担ったのが2010年代半ばに始まった経済産業省主導による健康経営銘柄、健康経営優良法人といった健康経営関連の認証であることは間違いないでしょう。健康経営銘柄、健康経営優良法人は、前年の秋に申請が受け付けられ、翌年の2~3月に認定が公表されるのが定例のスケジュールとなっています。

「健康経営銘柄2024」、「健康経営優良法人2024」の大規模法人部門については例年通り健康経営度調査への回答が認定のための基礎データとなります。「健康経営銘柄2024」は東京証券取引所の上場企業が対象となっており、健康経営度調査の結果に財務指標等を加味して認定されます。「健康経営優良法人2024」の大規模法人部門は健康経営度調査の評価をもとに認定されます。「健康経営優良法人2024」の大規模法人部門の上位500法人は「ホワイト500」として認定されます。

「健康経営銘柄2024」、「健康経営優良法人2024」の大規模法人部門に向けた健康経営度調査の回答期間は、

令和5年8月21日(月曜日)~令和5年10月13日(金曜日)17時となっています。https://www.meti.go.jp/press/2023/08/20230821001/20230821001.html

健康経営度調査は、「経営理念・方針」、「組織体制」、「制度・施策実行」、「評価・改善」、「法令遵守・リスクマネジメント」の5つの領域について申請する企業が自社の取り組みについて回答するものです。その内容は大きくは変わりませんが、毎年若干修正が加えられています。そこで、今回は、「健康経営銘柄2024」、「健康経営優良法人2024」の大規模法人部門の申請に必要となる令和5年度健康経営度調査のポイントについて概観してみます。

令和5年度健康経営度調査の注目点

令和5年度の健康経営度調査において、注目されるのは「経営理念・方針」の領域において、「従業員パフォーマンス指標及び測定方法の開示」が、健康経営銘柄及びホワイト500の取得については必須項目となっている点です。

出所 令和5年度健康経営度調査 https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/pdf/009_s02_00.pdf

具体的には、プレゼンティーイズム、アブセンティーズム、ワーク・エンゲイジメントのいずれかの指標の実績値、及びその測定方法を開示することが求められています。

プレゼンティーイズムとは、仕事をしているが健康上の問題により生産性が低下している状態を指します。たとえば、花粉症によって仕事に集中できない、メンタルヘルス不調で仕事に集中できていないといった状態が該当します。プレゼンティーイズムを測定するいくつかの定評のある調査票があり、それらを用いて測定したり自社で開発した調査票、あるいは他社に委託して測定していることが多いと思います。

アブセンティーズムとは、健康上の問題によって仕事ができていない状態、仕事を休んでいる状態を指し、病気による欠勤日数、休職日数によって測定することが多いと思います。

ワーク・エンゲイジメントは、活力、没頭、熱意をもって仕事にいきいきと取り組んでいる状態を指します。ユトレヒトワーク・エンゲイジメント尺度(UWES)で測定するのが一般的ですが、日本の場合はストレスチェックで使用する新職業性ストレス簡易調査票にワーク・エンゲイジメントに関する項目が含まれているため、その項目を用いることも多くなっています。

出所 令和5年度健康経営度調査 https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/kenko_iryo/kenko_toshi/pdf/009_s02_00.pdf

昨年度以前も「評価・改善」の領域において、プレゼンティーイズム、アブセンティーズム、ワーク・エンゲイジメントの測定に関する項目が有ったため、これらの項目に昨年度も対応できていた企業はその内容を開示するだけで対応が可能ですが、そもそも測定を行っていなかった企業には大変厳しい内容となっています。専門家のアドバイスを受ける等により早急にプレゼンティーイズム、アブセンティーズム、ワーク・エンゲイジメントを測定する態勢を整える必要があります。

その他、令和5年度健康経営度調査では、「3.制度・施策実行」の育児・介護に関する支援に関する取り組み状況に関する項目が増加しています。この点については育児・介護に関する支援を重視する国の方針も影響しているものと思われます。

<執筆者紹介>宮中 大介。はたらく人の健康づくりの研究者、株式会社ベターオプションズ代表取締役。行動科学とデータサイエンスを活用した人事・健康経営コンサルティング、メンタルヘルス関連サービスの開発支援に従事。大学にてワーク・エンゲイジメント、ウェルビーイングに関する研究教育にも携わっている。MPH(公衆衛生学修士)、慶應義塾大学総合政策学部特任助教、日本カスタマ―ハラスメント対応協会顧問、東京大学大学院医学系研究科(公共健康医学専攻)修了

以 上

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