学ぶには教えることが近道?
はじめに
現在日本においては「学び直し」、「リスキリング」といったキーワードが話題に上がることが多くなっています。実際に資格取得を目指すために勉強したり大学や大学院に入り直す人も一定数存在すると思われます。その際に「どのような学び方をするとが学んだ内容が定着しやすいのか」という疑問を持つ人も多いと思いますが、一般に知られている勉強ノウハウとして、「自分で学んだ内容を他人に教えることで自分の理解度や定着度を向上させる」というものがあります。今回はこのノウハウを裏付ける研究がありましたので、ご紹介したいと思います。
<執筆者紹介>宮中 大介。はたらく人の健康づくりの研究者、株式会社ベターオプションズ代表取締役。行動科学とデータサイエンスを活用した人事・健康経営コンサルティング、メンタルヘルス関連サービスの開発支援に従事。大学にてワーク・エンゲイジメント、ウェルビーイングに関する研究教育にも携わっている。MPH(公衆衛生学修士)、慶應義塾大学総合政策学部特任助教、日本カスタマ―ハラスメント対応協会顧問、東京大学大学院医学系研究科(公共健康医学専攻)修了
研究の内容
この研究はFiorellaとMayerによるものです。
Fiorella, L., & Mayer, R. E. (2013). The relative benefits of learning by teaching and teaching expectancy. Contemporary Educational Psychology, 38(4), 281-288.
この研究はアメリカのカリフォルニア大学サンタバーバラ校の心理学の実験参加者プールに登録している大学生93人を対象として実施されました。この研究においては、自分が教師になって教える群、教師になって教えると言われるだけの群(実際には教えない)群、ただ学ぶだけの3つの群を設定し、物理学のドップラー効果に関する資料の理解度の比較を行いました。
この研究では実験が2回行われています。
1回目の実験では、ランダムに分けられた3つの群の学生が10分間ドップラー効果についての資料を読んで学びます。自分が教師になって教える群、教師になって教えると言われるだけの群はその後5分間でドップラー効果について説明してもらうと言われます。自分が教師になって教える群は学習後にドップラー効果を他人に説明しその内容をビデオに録画します。その直後に理解をテストを行い、3群で点数を統計的に比較しました。その結果、自分が教師になって教える群と後で教えるように言われた群は、学ぶだけの群に比べて点数が高いという結果でした。一方、自分が教師になって教える群と後で教えるように言われた群では差がありませんでした。
次の実験は、前の実験と条件や手続きは同様です。前の実験とは別の大学生75人が研究に参加し、3つの群にランダムに分けられて10分間ドップラー効果についての資料を読んで学びます。前の実験と異なる点は理解度確認テストが1週間後に行われたという点です。理解確認テストの点数を統計的に分析すると、自分が教師になって教える群が学ぶだけの群よりも点数が高いという結果は同じでしたが、後で教えるように言われただけの群は、学ぶだけの群と理解度テストの点数に有意差がありませんでした。
研究者らは、理解の定着には実際に自分が説明する立場に立って教えることが奏功したと結果を解釈しています。
終わりに
上記の研究の内容を踏まえると、学び直しやリスキリングをしている人は学んだ内容を人に説明してみる、ブログやnoteに書いてアウトプットしてみると良いかもしれません。
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以 上