テレワークの現状

はじめに

コロナ禍は日本の労働者の働き方に大きな影響を与えました。テレワークの普及その1つと言えます。今回はテレワークの現状について調査結果をもとに概観してみたいと思います。

<執筆者紹介>宮中 大介。はたらく人の健康づくりの研究者、株式会社ベターオプションズ代表取締役。行動科学とデータサイエンスを活用した人事・健康経営コンサルティング、メンタルヘルス関連サービスの開発支援に従事。大学にてワーク・エンゲイジメント、ウェルビーイングに関する研究教育にも携わっている。MPH(公衆衛生学修士)、慶應義塾大学総合政策学部特任助教、日本カスタマ―ハラスメント対応協会顧問、東京大学大学院医学系研究科(公共健康医学専攻)修了

テレワーク実施率の特徴

日本生産性本部が公表している「第13回働く人の意識に関する調査」(https://www.jpc-net.jp/research/detail/006527.html)によれば、テレワークの実施率はコロナ禍直後の2020年5月には30%を超えていたのが、その後なだらかに低下を続けており、5類移行後の2023年7月には15%程度になっています。ただし、このテレワークの実施率を従業員規模別に見てみると、従業員規模が大きい企業ほどテレワークの実施率が高いこと、1001名以上のいわゆる大企業において2020年5月以降のテレワークの実施率の低下幅が大きいことが分かります。

テレワークの実施率が低下している背景としては、テレワークではコミュニケーションがとりづらい、業務効率が低下すると判断した企業側が出社中心に移行していることが考えられます。

日本生産性本部による調査結果を見てみると、テレワークで効率が上がったと回答している人の割合、テレワークに満足している人の割合がコロナ禍を経て向上していることが分かります。これには2つ要因が考えられます。1つは、テレワーク経験が長くなるにつれて労働者がテレワークに習熟し業務を効率的に行うことが出来るようになったということです。もう一つは、テレワークに向いていない業種の企業や職種の従業員がオフィス勤務に回帰し、テレワークに向いている企業や職種の従業員がテレワークを継続しているということです。実際にテレワーク設問の回答者数は2020年5月の319人から2023年7月の141人にまで減っています。

テレワークに関する動向

前節では調査結果から、テレワークに向いている業種や職種の人がテレワークを継続している可能性が示唆されました。テレワークに関して今後の注目すべき動向としては育児や介護中の労働者の働き方として普及の可能性がある点です。

厚生労働省の労働政策審議会雇用環境・均等分科会においては今後の育児介護休業法の改正も睨んで、仕事と育児、介護の両立支援策が検討されています。その中では、育児中の労働者に対してテレワークを利用できるように事業主の努力義務とすることが検討されています。介護を経験している労働者に対しても、介護中にテレワークを実施することが負担になることを考慮して、努力義務とすることが検討されています。

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_37110.html

https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/001183803.pdf
https://www.mhlw.go.jp/content/11901000/001183803.pdf

終わりに

テレワークについては元々は東京五輪の交通渋滞を避けるための手段として普及が目指されてきました。https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/news_topics/kyoku_oshirase/_120743/_122075_00001.html

しかし思うようにテレワークが普及しなかったところに、新型コロナウイルスの感染拡大により感染防止を目的として急速に普及した経緯があります。コロナ禍を経てテレワーク実施率は徐々に低下していますが、大企業を中心として一定水準で実施率が推移しています。今後は、育児や介護中の労働者が業務を負担なく継続できるような手段としてのテレワークの利用が目指されているのが現状と言えそうです。

以 上

Follow me!