平成29年労働安全衛生調査(実態調査) が厚生労働省より公表

平成29年労働安全衛生調査(実態調査)が8月28日に公表されました。

https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/h29-46-50b.html

本調査は、厚生労働省が事業所の安全衛生管理、労働災害防止活動及び安全衛生教育の実施状況等の実態、労働者の仕事や職業生活における不安やストレス等の実態について把握するために、毎年実施しているものです。調査項目により例外はありますが、原則として各年の10月31日現在を基準として調査されています。

本調査はサンプルとして抽出された事業所を対象とした事業所調査と、事業所に所属する労働者を対象とした労働者調査に分かれており、いずれも我が国の職場のメンタルヘルスに関する実態を把握できる資料として重要です。

弊社として、特に注目する点として2点ご紹介致します。

一点目としては、メンタルヘルス不調を理由として連続1ヶ月以上休業した労働者の割合、及び退職した労働者の割合に関する調査です。本結果は、常用労働者10人以上を雇用する民営事業所のうちから、産業、事業所規模別に無作為抽出した約14,000事業所(有効回答率:62.2%)を対象とした事業所調査に含まれる結果であり、非常に信頼度が高い調査と言えます。

まず、事業所規模別の休職率、退職率を見てみると、事業所規模が大きいほど、休職率が高くなっています。退職率は規模の小さい事業所で高い傾向にあります。その結果、規模が小さい事業所では休職率と退職率の差が小さく、規模が大きい事業所ではその差が大きくなっています。

この結果の背景としては、事業所の規模が大きいほどメンタルヘルス不調者が多いと言うよりは、大規模事業所ほど人員配置に余裕があることや休復職対応のノウハウがあることから、メンタルヘルス不調の労働者を長期間休職させたり、手厚い復職支援を実施する余裕があるため、休職率が高くなっていると考えられます。一方で、99人以下の中小規模の事業所では、休職率と退職率がほぼ等しくなっていることからは、メンタルヘルス不調の労働者が休職を経ずに退職したり、復職したもののその後退職している可能性があります(※)実際、弊社の仄聞する限りにおいても、大手企業であれば、専属の産業保健スタッフと人事部主導で復職後の業務負荷を調整する、職場の対人関係が原因となっている場合には別の部署の異動するといった対応がされることが一般的ですが、中小企業ではそういった対応が難しく、復職したとしてもその後短期間のうちに退職を余儀なくされるという事例も多く見られます。

※本調査においては、同じ労働者が連続1か月以上休業した後に退職した場合は、「退職した労働者」のみに計上されます。

なお、事業所の産業別の休職率、退職率も公表されておりますが、休職率の高い、「電気・ガス・熱供給・水道業」、「情報通信業」、「金融業,保険業」は、大企業に所属する事業所が多く、休復職支援体制が整っているため、休職率が高くなっている可能性があります。

注目される二点目として、ストレスチェックの実施状況が挙げられます。義務化が施行されたのは平成27年(2015年)12月1日ですので、義務化前の平成27年(2015年)から平成29年(2017年)までの3年分の推移を見てみます。


まず、特徴として言えるのは、ストレスチェック制度義務化前の平成27年では、事業所規模が大きくなると実施率が高くなるというはっきりとした比例関係が見られますが、義務化以降の平成28年以降は、実施義務のある50名以上の事業所に関しては、規模による実施率の差が非常に小さくなっている点です。法律という強制力によって、ストレスチェックの実施率が大きく上昇したことが伺えます。50~299人規模の中小規模の事業所においては、義務にも関わらず実施できていない事業所が一定数存在することが伺えますが、平成28年から平成29年にかけて実施率の上昇が見られますので、義務化以降の行政によるストレスチェック制度の周知、実施の指導の効果が出ているものと推察されます。

当分の間ストレスチェックの実施が努力義務とされている50名未満の事業所については、義務化後以降、約半数の事業所で実施されている状況です。この結果については、解釈に注意が必要と思われます。すなわち、大企業においては、50名未満の事業所も含んで法人全体としてストレスチェックを実施することが一般的であるため、調査区分の50名未満の事業所でストレスチェックを実施したと回答しているのは、大企業の事業所が中心と考えられます。

弊社では50名未満の中小企業の状況を見聞する機会が多いですが、努力義務であってもストレスチェックを実施するという中小企業は非常に少ないのが実情です。本調査の50名未満の事業所の実施率は、義務化に際して法人全体としてストレスチェックを実施している大企業の事業所と、努力義務のため依然として実施していない中小企業の事業所が混在した結果を反映している可能性があります。

我が国の労働者の約2/3は中小企業に勤務しておりますので、メンタルヘルス対策を一層推進するためには、事業所の規模を問わないストレスチェックの義務化、中小企業のためのメンタルヘルス対策関連の補助金の拡充、行政による周知の強化等の対策が望まれます。

以 上

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