ソーシャルメディアとメンタルヘルス

はじめに

昨今、ソーシャルメディアとの適切な関わり方が注目を集めています。特に、ソーシャルメディア利用がもたらす負の影響が注目を集めています。

ソーシャルメディア利用による負の影響としては、ソーシャルメディア利用中に、不特定多数の利用者から誹謗中傷を受けるといった問題が挙げられます。

その他には、ソーシャルメディア利用を通じてあまりにも多くの情報に曝露し続けることがメンタルヘルスに影響するのではないかともいわれています。
また、ソーシャルメディアに依存するあまり常にスマートフォンをチェックしてしまうという「スマホ依存」につながる可能性も示唆されています。

今回は、こちらのソーシャルメディア利用による情報曝露がメンタルヘルスに及ぼす影響を考えてみたいと思います。

ソーシャルメディアの利用状況

まず、総務省による「平成30年版 情報通信白書のポイント」から日本におけるソーシャルメディアの利用状況を確認しておきましょう。

https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/pdf/n4200000.pdf

同調査では、ソーシャルメディアを「ブログ、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)、動画共有サイトなど、利用者が情報を発信し、形成していくメディア」として定義しています。また、同調査では、ソーシャルメディアを「利用者同士のつながりを促進する様々なしかけが用意されており、互いの関係を視覚的に把握できるのが特徴」と考察しています。

同調査では、ソーシャルメディアの利用状況を国際比較するため、ソーシャルメディアとして、① Facebook、②Twitter、③ LINE、④その他の SNS、⑤その他のオンラインチャット、⑥ブログ、⑦情報・レビュー共有サイト、⑧掲示板、⑨メーリングリスト、⑩オンラインゲーム、を挙げて国際調査(日本、アメリカ、イギリス、ドイツ)を実施しています。

欧米諸国との日本で利用状況を比較して見ると、日本では、LINEの利用が多く、Facebook、Twitter、Instagramのような情報発信型のメディアの利用は少ないという結果が出ています(159-160頁)。

ソーシャルメディアを利用して良かったこととして、アメリカ、ドイツ、イギリスと比較すると、日本では、「暇つぶしができた」という回答がドイツに次いで2位となっているのが特徴です。逆に、日本でソーシャルメディアを利用する人においては、「新しい友人ができた」、「相談相手ができた」といった新たなつながりが生まれたり、「家族や友達との結びつきが深まった」という既存のつながりを強化できたというメリットは感じていないことが分かります(162頁)。

ソーシャルメディア利用とメンタルヘルス

次に、ソーシャルメディアの利用とメンタルヘルスの関連について最新の研究論文を見てみましょう。PLOS ONE誌に掲載された復旦大学の公衆衛生の研究者による中国で実施された、コロナ禍におけるソーシャルメディアの利用とメンタルヘルスの関連についての研究です。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7162477/

調査は2020年1月31日から2月2日にかけて行われ、18歳以上の5851人が調査に参加し、調査を完了した4872人が分析対象とされました。

ソーシャルメディアの利用については、過去1週間に、COVID-19に関する情報に中国のSNSツール上でどの程度の頻度で接したかを聞いています。また、メンタルヘルスに関しては、不安と抑うつの症状について検討しています。

結果としては、以下のようなことが分かりました。

性別や年齢、教育水準や、職業、居住地という要素を統制すると、ソーシャルメディアの利用と抑うつに関しては統計的に意味のある関連が見られませんでした。一方で、SNSツールをあまり利用しなかったと回答した人に比べて「頻繁に利用した」と回答した人は、不安の程度が高かったという結果が得られています。災害発生時時に、ニュースに過度に接すると、不安が高まってしまうという可能性を示唆していると言えます。

終わりに

日本では、諸外国と比較して新型コロナウイルスの影響は現状まだ小さいと言えます。むしろ、豪雨等の自然災害による被害の方が影響の方が一時のインパクトしては大きいと言えるかもしれません。

自然災害が発した際の災害現場の状況は以前はテレビや新聞、ラジオといった旧来のマスメディアのみが報道していましたが、現在ではソーシャルメディア上で個人が情報を発信することが容易になっています。したがって、ソーシャルメディアの普及率が上がった現在においては、テレビや新聞のニュース報道を通じてのみ災害状況に触れていた頃に比べて、ソーシャルメディアを通じて自然災害による災害状況に対する接触頻度が高くなっている可能性があります。

ソーシャルメディアを通じた過度の情報曝露によるメンタルヘルスへの悪影響を避けるためにも、必要最低限のメールやメッセージ確認以外は、ニュースサイトやソーシャルメディアの確認頻度をなるべく少なくすることが考えられるかもしれません。

以 上

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