従業員エンゲージメントをKPIとした組織風土改革事例

はじめに

昨今、従業員エンゲージメントが注目を集めていますが、人的資本開示への対応だけでなく、組織風土改革を行う際の KPI として従業員エンゲージメントを活用することも考えられます。そこで、今回は従業員エンゲージメントをKPIとして組織風土改革を実施したSUBARU社の事例を紹介してみたいと思います。SUBARU社の取り組みは統合報告書で開示されています。統合レポート2022の35頁をご覧ください。https://www.subaru.co.jp/ir/library/annual-reports.html

SUBARU社の取り組み

SUBARU社においては、従業員エンゲージメントを「仕事のやりがい」と「会社への誇り」と定義し、従業員意識調査における「会社に対する誇りとやりがいの両方を感じている人の割合」を測定することにより従業員エンゲージメントを定点観測しています。2025年度の目標を70%と設定し、2017年度から各年度の結果を開示しています。

SUBARU社においては従業員エンゲージメントを高めるための取り組みが、経営層、マネジメント層、一般従業員の各レイヤーで実施されています。

経営層においては、トップメッセージ、 役員報酬の評価に従業員エンゲージメント(従業員満足度評価)を採用、 将来戦略の継続的な発信、 社長対話集会といった取り組みが実施されています。

マネジメント層においては、ファシリテート&コーチング研修、 キャリア面談、 タレントマネジメントシステムでの見える化等が実施されています。

一般従業員層においては、SUBARUビジョン理解プログラム、Team Window※でのSUBARUの理解拡充、スマイルアッププロジェクトが実施されています。※ Team Window:さらに強固な組織をつくるために全部門の代表メンバーが参画して情報伝達やディスカッションを行う取り組み

以上を踏まえると、SUBARU社においては、経営層からのビジョンの発信、社員への伝達、浸透に重点が置かれていたことが分かります。

取り組みの結果の効果検証として、従業員エンゲージメント項目と併せて「コミュニケーション・風通し」、「能力向上」「ワークライフバランス」、「企業理念への共感」といった従業員エンゲージメントの要因に当たる項目の結果の推移も開示されています。「企業理念への共感」が2018年度→2021年度で、64⇒74と10ポイント向上しており、SUBARU社で実施された理念共有中心の取り組みの効果が表れていることが分かります。しかしながら、従業員エンゲージメントは依然として目標値に届いていないことから、実施する対策の重点を理念の共有以外に移す必要があるようにも思えます。

まとめ

このように従業員エンゲージメントを定義し、意識調査等の調査によって従業員エンゲージメント及び従業員エンゲージメントの要因の両方を測定することで、自社での取り組みが成果につながっているのかを把握し、間違っているのであれば修正することが可能となります。

工場等の投資と異なり従業員組織風土改善のような投資は目に見えないことから効果検証があまりされないのが現状です。しかし、株式会社であれば株主から資金を預かっているわけですから工場の投資と同様に組織風土のようなソフト面での投資についても投資がうまくいってるかどうかを継続的に監視し、株主にも開示していく必要があると言えます。そのためのツールとして従業員エンゲージメントは非常に有用と言えます。

以 上

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