ストレスチェック集団分析のポイント

はじめに

今年度も企業でのストレスチェック実施がいよいよ本格化してきたと思います。ストレスチェック義務化から7年が経過し、企業においてはストレスチェックの実施だけではなく、ストレスチェック結果を組織や属性単位で集計し、部署や属性の傾向を把握する、いわゆる集団分析を実施している企業も相当数に上っていると思います。そこで今回は、ストレスチェック結果を集団分析をする際のポイントについて解説したいと思います。

業界平均値との比較には意味がない

ストレスチェックにおいてスタンダードとなっている職業性ストレス簡易調査票を用いている場合には、総合健康リスクを部署別に集計して、検討することが多いと思います。外部のベンダーに委託してストレスチェックを実施している場合には、ベンダーから提供された業種別の平均値と自社あるいは部署の総合健康リスクを比較することが多いと思います。

 ストレスチェックを提供している情報基盤開発、東京海上日動メディカルサービスから提供されているそれぞれの顧客企業のストレスチェックの結果を集計した業種別の総合健康リスクを見てみます。両社の業種区分が異なったり、両社で集計されている業種が異なるため、共通して結果が公開されている業種について比較しました。

情報基盤開発:https://blog.altpaper.net/21839

東京海上日動メディカルサービス:https://www.tokio-mednet.co.jp/.assets/2022%E5%B9%B4%E5%BA%A6TMS%E3%83%8A%E3%83%93%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%83%E3%82%AF%E3%81%AE%E7%B5%90%E6%9E%9C%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E8%AA%BF%E6%9F%BB-%E7%AC%AC2%E5%BC%BE.pdf

「卸売業、小売業」、「宿泊業、飲食サービス業」は両社の総合健康リスクが類似していますが、他の業種については両社で差があります。特に「製造業」、「運輸業、郵便業」では10以上の総合健康リスクの差があります。これは両社の顧客企業が異なっていることが理由です。

したがって、自社の総合健康リスクをストレスチェックベンダーから提供された業種平均値と比較して良かったとしても、たまたまそのストレスチェックベンダーの顧客企業で当該業種に含まれる企業の結果と比較して良かったと言えるにすぎません。自社の総合健康リスクをベンダーから提供された業種別の平均値と比較して良かった、悪かったと議論することにはあまり意味がないと言えます。

企業内でのばらつきに注目すべし

ストレスチェックを実施した企業では部署別に総合健康リスクをの良い順から悪い順に並べて傾向を把握するということを実施していると思います。弊社では、これに加えて同じ企業内でのばらつきに注目することをお勧めしています。

たとえば、部署別の総合健康リスクをヒストグラムにしてみると、極端に高い、あるいは極端に低い総合健康リスクの部署が視覚的に把握出来ます。その際に特に注目すべきは総合健康リスクが極端に高い部署です。総合健康リスクは全国平均が100で100を下回っている場合は、全国平均よりもさまざまな健康問題が起こりづらいとされていますが、弊社の経験では、総合健康リスクが100を下回っていても企業内で総合健康リスクの数値が極端に高い部署では何らかの問題が起こっていることが多いです。特に総合健康リスクの構成要素である仕事の量的負担、上司の支援、同僚の支援の結果がその企業の中で極端に悪くなっていることが多いため、早急に介入することをお勧めします。仕事の量的負担の数値が悪い場合は部署の労働時間が長くなっていないか、業務にトラブルが発生していないかを確認します。また、上司の支援、同僚の支援の数値が極端に悪い場合は、上司と部下の間、あるいは同僚間でハラスメントが発生していないか確認します。

まとめ

  • ストレスチェックベンダーから提供されている業種別の総合健康リスクはあくまでそのベンダーの顧客企業に関する結果であり、ベンダーが異なると同じ業種であっても総合健康リスクの数値が大きく異なる。
  • ストレスチェックの集団分析では、部署別の総合総合健康リスクを把握することが多いが、総合健康リスクが100を下回っていても、企業内で極端に総合健康リスクが高い部署では問題が起こっている可能性が高いので、早急に介入すべきである。

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