厚労省調査から見る労働者と事業所のメンタルヘルス状況

はじめに

今年は5月に新型コロナウイルス感染拡大対策が大きく変更となり、マスク姿の人が大幅に減少しました。多くの企業においてもリモートワーク優先から出社優先へ揺り戻しが起こっています。そのようなコロナ禍を経て新しい段階に向かう中で働く人のメンタルヘルスの状況はどのように推移しているのでしょうか?そこで、厚生労働省が毎年実施している労働衛生調査を参考に概観してみます。

労働者調査

労働衛生調査は全国の事業所をサンプリングして事業所単位で回答してもらう事業所調査と、それらの事業所に雇用されている労働者を対象とした労働者調査からなります。まず労働者者調査から見てみたいと思います。

仕事で強いストレスを感じている労働者の割合の推移を年代別に見てみます。直近の令和4年度の調査では30-39歳代を除いて8割以上の労働者が仕事で強いストレスを感じることがあると回答していることが分かります。なお直近の令和4年度調査で割合が上昇しているように見えますが、令和4年度から調査形式が変更になっており、その影響も考えられるため注意が必要です。具体的には令和3年度までは強いストレスの有無を回答してもらい、その後ストレスの内容を10項目から3項目まで挙げてもらう形式で、強いストレスの有無に対して「あり」と回答した人を「強いストレス」を感じるとして集計していました。令和4年度からは、最初から強いストレスを感じる内容を10項目から3項目まで挙げてもらい、1項目でも挙げた人を「強いストレスを感じる」として集計しています。

労働者が感じるストレスの内訳としては、例えば、「対人関係(セクハラ・パラハラを含む。)」は図のように推移しています。調査年度によって大きな違いがないことが分かります。

労働衛生調査では、適宜調査項目が追加、修正されており、平成30年度からは強いストレスの内訳として挙げてもらう項目に「顧客、取引先等からのクレーム」が含まれています。直近の4年間で40-49歳で「顧客、取引先等からのクレーム」を挙げた労働者の割合が上昇していることが分かります。直近の令和4年度では約30%と3人に1人程度が「顧客、取引先等からのクレーム」を強いストレスの内訳として挙げているのが特徴です。カスタマーハラスメント対策が注目される中で、こちらの数値の今後の変化も注目されるところです。

事業所調査

事業所調査では、事業所単位でのメンタルヘルス対策の実施状況等が集計・分析されています。その中でも企業の人事担当者の特に参考になるのは、平成28年度まで集計されていた、メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者の割合です。多くの企業において1か月以上休業した場合には「病気休職者」として定義されて集計、管理されることが多いため、自社の休職率が高いのか低いのかを知る上で参考になる数値と言えます。全業種平均で0.4%、最も高い「情報通信業」、「金融業,保険業」で1.2%となっています。したがって、1000人程度の企業規模で1か月以上の休職者が20人以上存在する場合には休職者の減少に向けて対策を強化することを考えても良いかもしれません。

以 上

Follow me!