ピープルアナリティクスのすゝめ③

ピープルアナリティクス(人と組織のデータ分析)について紹介するシリーズ第三回目です。

「ピープルアナリティクスのすゝめ②」はこちら。https://better-options.jp/2019/07/28/%e3%83%94%e3%83%bc%e3%83%97%e3%83%ab%e3%82%a2%e3%83%8a%e3%83%aa%e3%83%86%e3%82%a3%e3%82%af%e3%82%b9%e3%81%ae%e3%81%99%e3%82%9d%e3%82%81%e2%91%a1/

前回はピープルアナリティクスを進める上で、目的を決定することが重要であることを解説しました。今回は、ピープルアナリティクスにおける「逆算思考」の重要性を解説します。

昨今、ピープルアナリティクスにチャレンジしてみた企業様からは、「分析してみたものの、期待した成果が出なかった」、「社内の人事データベースからデータを収集したが、うまく分析できなかった」という声が聞かれます。その原因の一つとして、ピープルアナリティクスを活用する際の思考の順序が適切でないことが考えられます。

ピープルアナリティクスにおいては、データ収集・蓄積⇒分析⇒アウトプットの順で作業が進むため、同じ順で思考を進めがちです。しかし、ピープルアナリティクスを成功させるためには、作業の進み方とは逆の、アウトプット⇒分析⇒データ収集・蓄積で進めることがポイントです。つまり、分析結果として何を出すのか(アウトプット)を検討し、そのためにどのような分析手法を適用するのかを検討し、その分析手法が適用可能なデータを収集する・蓄積するという発想で進めることが重要です。

このような「逆算思考」をとるべき理由として、①アウトプットが経営に有用なものでなければ(継続的な)予算獲得が難しい、②分析手法は適用できるデータを選ぶ、③データ収集前に事前の同意が法的に必要な場合がある(法的には不要でも同意を得ることが望ましい場合がある)、が挙げられます。

 

まず、①の「アウトプットが経営に有用なものでなければ(継続的な)予算獲得が難しい」という点です。

いくら労力をかけて高度な分析を行ったとしても、その結果として得られるアウトプットが経営に有用なものでなければ意味がありません。分析手法の検討や実際の分析に時間をかけるまえに、まずは、そもそもピープルアナリティクスを活用した分析の結果のアウトプットとして何を目指すか、そのアウトプットは経営にインパクトがあるのかをまず最初に検討することが重要です。なお、ピープルアナリティクスにおける分析アウトプットの検討については前回の解説を参考にして頂ければと思います。

次に、②の「分析手法は適用できるデータを選ぶ」です。

ピープルアナリティクスでは統計学や機械学習といった分析手法を用いることになりますが、あるアウトプットを得るための分析手法は特定のタイプのデータにのみ適用可能な場合があります。分析手法Aが適用できるデータの形式はα、分析手法Bが適用できるデータの形式はβといったように、分析手法とデータの関係は、鍵と鍵穴の関係にたとえられます。データを収集し蓄積する前に、必要となるアウトプットを出すために必要な分析手法がどのようなデータに適用可能なのかを検討しておかないと、せっかく準備したデータが役に立たないといった事態に陥りかねません。

最後の③「データ収集前に事前の同意が法的に必要な場合がある」点です。

ピープルアナリティクスにおいては、従業員の個人情報を含むデータを分析することが一般的ですが、個人情報保護法やその他の法令によって、個人情報を含むデータの収集にあたっては、データ収集前に事前の同意が法的に必要な場合や、法的には同意が必要ないが従業員の理解を得る上で事前の同意取得が望ましい場合があります。データ収集前に分析に必要なデータと分析手法、アウトプットの三点セットを検討しておけば、その検討内容を個人情報取得のためのプライバシーポリシーに盛り込むことができ効率的です。

弊社がご相談を受ける中で、「既に収集・蓄積されたデータを利用して何か分析したい」というデータ起点の発想をしてしまっている企業様が見られます。このデータ起点の発想に陥ってしまうと、既存のデータが収集された際のプライバシーポリシーに規定されていない分析やアウトプットを出してしまうことになりがちで、個人情報保護法で禁じられている目的外利用につながってしまう恐れがあります。

繰り返しになりますが、分析結果として何を出すのか(アウトプット)を検討し、そのためにどのような分析手法を適用するのかを検討し、その分析手法が適用可能なデータを収集する・蓄積するという、分析の作業工程の進み方とは逆の発想で進めることが重要です。

次回からは具体的な分析事例に即して留意点を解説します。

以 上

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