業種・職種別ストレス対策の重要性

はじめに

弊社は多くの企業様のメンタルヘルス対策を支援させて頂いておりますが、その第一歩として、顧客企業の事業内容、職種構成について詳しくヒアリングさせて頂くことを重視しております。これは、一律のメンタルヘルス施策ではなく、企業の事業内容や職種に適した施策を実行しないと実効性に欠け、効果が出づらいためです。以下では、そうした業種別、職種別の対策の考え方について解説したいと思います。

業種別のストレス対策

まず、業種別のストレス対策の重要性について考えてみます。業種別のストレス対策における注意点としては、業種によるストレス対策のための人員・態勢の違いが挙げられます。

例えば製造業においては、労働安全衛生法の要請により、産業医や保健師のようないわゆる産業保健スタッフが充実していることが一般的です。

そのため不調を感じた従業員が相談する先として産業保健スタッフを想定することは可能です。また、メンタルヘルス研修の講師としての役割をそうした産業保健スタッフに委託することも可能と考えられます。

また、大規模製造業であれば、人事部門所属ながら現場に配属されている人事担当者(=いわゆる事業部付き人事担当者)が存在することも多く、現場でのメンタルケアの実施や、現場の課題を人事部門が吸い上げて企業の課題としてタイムリーに把握することが比較的容易と考えられます。

一方で、その他業種、特に小売業のような拠点分散型の業種においては、各拠点が事業場としての規模が小さいために産業医が選任されていないことが珍しくありません。

また、事業場ごとに人事担当者が配置されていることも少ないため、営業責任を負う店舗の責任者が現場の従業員のケア機能を担っているのが実情として多い印象です。そのため、店舗の従業員の状況がなかなか本部に伝わらず、企業全体として対策につながりづらいということもあります。そうした難しさに対応するためには、パルスサーベイツール等、現場のメンタルヘルス状況を把握するツールを活用する等により、遠隔での店舗の管理を前提とした対応を組み立てる必要が出てきます。

職種別のストレス対策

次に、職種別の対策です。

特に大企業においては複数の事業体を抱えることが通常となっており、一企業内に多種多様な職種が存在します。例えば、業種としてIT 業に属する企業であっても、エンジニア以外にも、営業、経理、人事等の複数の職種から構成されています。さらに、同じエンジニアという呼称であったとしても、上流工程を担当するエンジニアと、実際のコーディングを担当するエンジニア、運営・保守を担当するエンジニアでは働き方やストレス原因が異なると考えられます。

特に、顧客や取引先との折衝が仕事の中心となる職種、社内他部門との折衝が中心となる職種、比較的独立した課題に取り組む職種では、ストレスの感じ方や働き方が大きく異なることに注意が必要です。

お薦めする対策の考え方

まずは、自社での資源・事業場の特徴、職種の類型化をお薦めします。

自社の資源の特徴の把握

産業医、保健師、人事担当者等、メンタルヘルスケアに関わること可能な自社の資源を洗い出します。洗い出した各関係者については、方針周知、相談対応、研修講師等、各役割をどう分担できるかを検討します。

事業場の特徴の把握

大規模事業場型、中小規模事業場分散型、在宅中心型、自社の事業場のパターンがどれに該当するか検討します。在宅中心型はコロナ禍で初めて登場した類型なので、その特徴の把握と対策の立案が必要となります。

在宅中心型の特徴を簡単にまとめると下記のようになります。

オフィスの場合は、机や椅子に企業として配慮が可能だが、在宅勤務者の職場環境(執務姿勢等)に関しては企業が関与しづらい。在宅勤務者には従来の職場での対面でのラインケアや健康相談が実施できない。一方で、オンラインの方が相談しやすい働きやすいという従業員も存在する。

以下では、在宅者とオフィス勤務者に分けてメンタルヘルスケアの留意点を示します。

〇在宅者

感染は避けやすいが、一日中オンライン会議が可能になるためテクノストレスがメンタルヘルス不調につながる可能性がある。また、眼精疲労、運動不足、腱鞘炎等にも注意が必要である。対面でのコミュニケーションが不足するため、オンラインでメンタルヘルスケアや仕事への動機づけを適切に行うことが重要なポイントとなる。

〇オフィス勤務者

在宅者に比べると感染リスクが高いためオフィス出勤自体がストレス要因になる可能性がある。また、実際に職場に感染者が発生した場合は強いストレスを感じることがある。特に接客担当者は、顧客対応に起因するストレスと感染の脅威に起因するストレスの両方を感じていることが多いため、配慮が必要。

職種類型の整理

「職種」という言葉にとらわれず、自社で働いている人を、感じるストレスの共通性や働き方から分類します。企業にもよりますが、5~10個程度の類型にまとめると対策を立てやすいと思います。たとえば、以下のような類型が考えられます。

〇顧客との折衝を中心とする業務

対人関係によるストレスや収益責任によるプレッシャーが主なストレス要因となります。業務の裁量度を与えること、上司が部下の目標達成のために必要な支援を十分に提供することがポイントとなります。なお、この職種の管理職には収益責任と部下のマネジメント負担の両面で負担がかかるため、管理職に対するメンタルヘルスケアも重要です。

〇社内関係者向けの業務を中心とする業務

比較的ストレスの少ない職種です。上司との相性や仕事のやりがいに関してストレスを感じることが多くなります。仕事のパフォーマンスが目に見えづらい職種において突然メンタルヘルス不調に陥る従業員が多いため、定期的に仕事のやりがいや働きやすさ等に関して部下とコミュニケーションすることが重要です。

〇顧客向けの製品の製造に関わる仕事

一定の定型化した働き方が求められいる状態ではそれほどストレスがないですが、製品トラブルや急な納期変更等によって突然の働き方の変化を求められた場合に、突発的に大きなストレスが発生することには注意が必要です。

〇製品・商品・サービスの企画・開発に関わる仕事

仕事の裁量度が高いことが多く、業務量が多くてもストレスにつながりにくい職種が多いです。ただし、「好きで働いている」とは言っても、中長期的にはストレスやバーンアウトにつながり得ますので、従業員がハイペースな働き方を長期的に続けていないかは注意が必要です。クリエイティビティが求められる仕事ですので、プロジェクト期間中はハードに働くことは許可するものの、プロジェクト終了後には長期の休暇を取得させる等メリハリの利いたストレス管理が重要です。

類型化が済んだら、それぞれの類型ごとに「主なストレス」、「メンタルヘルスケアのポイント」、「留意点」といった内容をまとめて一覧化することをお勧めします。

以 上

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