2022年度上半期のメンタルヘルス業界動向

はじめに

2022年度も9月に入りました。今回は2022年度の上半期のメンタルへルス業界で注目されたニュースについて扱ってみたいと思います。

東京大学大学院にデジタルメンタルヘルス講座が設立

2022年6月1日に東京大学大学院にデジタルメンタルヘルス講座が設立されました。

https://dmh.m.u-tokyo.ac.jp/

この講座は東京大学大学院医学系研究科において職場のメンタルヘルスが専門であった川上憲人教授が東京大学を退官された後に、社会連携講座として民間企業等15社からの出資を得て設立された講座です。『インターネットなどのデジタル技術を応用して精神健康を測定し、その保持・増進を支援する介入プログラムを提供する「デジタルメンタルヘルス」技術とこれを用いたサービスについて基礎および応用研究』を目的としています。

スマートフォンアプリやSNSを利用してメンタルヘルスケアを提供するいわゆるデジタルメンタルヘルスは、米国を中心に基礎研究がまさに社会で応用される段階になっています。日本においては、社会での応用はまだまだこれからの状態であり、さまざまなアプリケーションの科学的な効果検証が課題となっています。同講座と民間企業の共同研究をきっかけに、日本においてもデジタルメンタルヘルスが発展することが期待されます。

設立にあたって設立記念イベントが行われており、動画が公開されています。※2022年8月15日まで公開です。

オンラインカウンセリングのcotree社の経営体制が変更

個人向オンラインカウンセリング分野で、2014年の設立以来業界をリードしてきた株式会社cotreeの経営体制が変更になりました。2022年6月の株主総会にて、創業者の櫻本氏が代表取締役を退任し、新たな取締役等が選任されています。

https://cotree.co/posts/20220701

cotree社は2021年6月よりJMDCグループ入りしており(https://cotree.co/posts/20220111)、今回新たに取締役、監査役として選任された2名はJMDC 出身であることから、今後は名実ともにJDMCグループとして事業展開をしていくことが予想されます。医療ビッグデータの利活用にノウハウを有するJMDC社がオンラインカウンセリング分野でどのように事業を展開していくのか注目されます。

メンタルヘルステクノロジーズ社が上場

産業医クラウド等のメンタルヘルス関連サービスを提供する、株式会社メンタルヘルステクノロジーズが、2022年3月28日付で東京証券取引所マザーズに上場しました。

https://mh-tec.co.jp/

メンタルヘルス業界においては上場企業が希少であり、上場企業の子会社、独立系の小規模な事業者が多く存在するのが特徴です。今回の、メンタルヘルステクノロジーズ社の上場までは、アドバンテッジリスクマネジメント社が長らく業界唯一の上場企業でした。

上場企業は、決算や業績に影響し得る事象の発生時に情報開示することが求められています。また、投資家に対して、自社の業績のみならず業界トレンド等の情報を開示していくことが求められます。メンタルヘルス業界では業界全体として情報開示が少ないことが課題と言えるため、同社の上場によりメンタルヘルス業界に関する情報開示が増えることが期待されます。

終わりに

今回取り上げた3つのニュースのキーワードとして、デジタルメンタルヘルス、ビッグデータ、上場企業の傘下入り、新規上場、といったところが考えられます。デジタルメンタルヘルスを実行するには、エンジニアの確保、システムへの投資等が必要になります。そのための手段として上場による資金調達や、合併等による規模の拡大、経営の効率化といった動き(※)が今後出てくる可能性があります。

※ヒューマンフロンティア社と保健同人社が2022年4月1日より業務提携することが公表されております。2社は三井物産の投資子会社が共通の親会社となっていることから今後の経営統合の可能性もあります。

https://www.humanfrontier.co.jp/news/blog/2022/04/post-126.html

弊社としても今後の業界動向を引き続き注視し、情報発信して参ります。

以 上

Follow me!