ストレスチェックは外部委託と内製化のどちらが得か?

2017年も10月に入り既に多くの企業で義務化後2年目のストレスチェックが実施されたことと思います。何かと不透明な点が多かった昨年度の実施と比較してスムーズに実施を終えられた企業が多いのではないかと思います。

現在、大多数の企業においてはストレスチェック実施が外部委託されていると思いますが、今後費用削減などを目的としてストレスチェックシステムを自社で開発して運用する、いわゆる内製化の検討に着手することを考えられている企業も有るかもしれません。

そこで、ストレスチェックを外部委託した場合と内製化した場合の、1.費用、2.独自機能・独自分析、3.外部ベンチマークとの比較、4.面接指導・カウンセリング、5.セキュリティの5つの観点から比較してみました。

 

 

1.費用

ストレスチェックを外部委託した場合の費用は

ストレスチェック対象者1人当たりの単価×ストレスチェック対象者数+外部委託先管理費用

として算定されることが一般的だと思います。一方、内製化した場合の費用は

システムの開発費用の償却費+社内資源の稼働費用

として算定されます。

システムの開発費用にはシステム開発会社に支払う開発費に加えてシステム開発会社の管理や要件定義、システムの検収などに関する人件費などが含まれ、社内資源の稼働費用としてはマークシートで実施する場合の入力、読み取り作業、システムの設定作業などに関する人件費などが含まれます。

内製化した場合の費用の内訳としてはシステム開発費用の償却費が占めることが予想されます。ストレスチェック制度は今後の定期的な見直しが予定されているため、制度の見直しによりシステム改修が必要になる可能性が有る点にも留意が必要です。

費用面だけで判断すると、ストレスチェックの対象人数が一定以上、たとえばグループ全体数十万人で実施するといった場合には、外部委託した場合の費用>内製化して自社でシステムを開発した場合の償却費用となり、内製化が選択肢になると考えられます。

ただし、内製化でのシステム開発にはストレスチェック制度に関する専門知識やシステム開発のノウハウが必要なため、自社で産業保健スタッフや情報システム関連部門(あるいはグループ内のシステム開発会社)などのリソースが十分に確保できることが前提となります。

また、対象人数が非常に多い場合には外部委託先に対して対象者1人あたりの単価にボリュームディスカウントが利くことが一般的であり、複数年契約のような契約方法によって外部委託価格を下げられる場合もありますので、内製化が有利になるのは、グループ企業も含めると対象人数が10万人以上存在するといった場合にはごく例外的な場合だと考えられます。

2.独自機能や独自分析

ストレスチェック実施の回を重ねると、従業員や経営層から機能や分析にさまざまな要望が出てくることが予想されます。しかし、たとえば、「システムに会社のロゴを入れたい」、「画面の色合いを自社コーポレートカラーに合わせたい」、「社内のイントラネットから直接アクセスしたい」、「独自の分析指標を追加したい」といったニーズのすべてに外部委託先が応えるのは難しいと考えられます。

一方、内製化した場合は、コストはかかりますが上記のような自社特有のニーズに応じてシステムの仕様を変更したり、機能を追加したり、独自の分析を行うことが可能です。

ただし、外部委託の場合も自社内に医師、保健師が実施者として指名されているか実施事務従事者が指名されていれば、ストレスチェックの生データを入手することができますので、社内資源の稼働コストが上がってしまう懸念はありますが、エクセルや統計ソフトで独自の分析を行うことは可能です。

3.外部ベンチマークとの比較

外部委託先が大手ストレスチェックベンダーであれば、業種別、企業規模別といった切り口での平均値などのベンチマーク指標を保有していると考えられますので、そうした外部のベンチマークと自社の結果を比較して自社の位置づけを知ることが出来ます。この点は内製化では難しい外部委託ならではのメリットと言えます。

4.面接指導・相談窓口

内製化した場合は、社内の産業医や自社が契約しているクリニックの医師で面接指導の実施に対応することになります。相談窓口についても健康管理室などの産業保健スタッフが対応することになるでしょう。
自社の産業医であれば、社内の事情を知っているというメリットがある一方で、産業医契約が嘱託契約の場合、面接指導の希望者が多く出た場合に急に勤務日数を増やすといったことが難しいため、タイムリーな面接指導の実施が難しい場合があります。
外部委託の場合は、社内の産業医で対応できない部分については、追加費用は発生しますが外部委託先に面接指導やカウンセリングを委託できる場合が有ります。ただし、外部委託先を通じた面接指導の担当医師や相談窓口の担当カウンセラーの品質管理が重要です。

5.セキュリティ

外部委託先の場合には、外部委託先システムが自社のセキュリティ基準を満たす必要があります。多くのストレスチェックベンダーではプライバシーマークやISMSを取得していますが、外部委託先のシステムに特定の基準を満たすことを求めている企業では対応可能な外部委託先が限られてしまうことが有ります。内製化の場合は外部委託に伴うセキュリティ基準の問題は発生しませんが、ストレスチェックのデータは機微な情報ですので内製化の場合にも厳格な管理が求められることは言うまでも有りません。

以上をまとめると、グループ全体の数十万人規模の対象者に実施し、かつ産業保健スタッフや情報システム部門を含めたシステム開発のリソースが潤沢であるといった場合を除いては、外部委託先を適切に選定して賢く使って行くという姿勢が望ましいと考えられます。

 

以 上

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