ピープルアナリティクスにおけるフィードバックの考え方

はじめに

ピープルアナリティクスでは解析結果をフィードバックすることが多くあります。たとえば、従業員に実施したアセスメントの結果をフィードバックする、あるいは組織の状態分析した結果を管理職にフィードバックする等があります。そのようなフィードバックを仕様を考える際に、知っておくと便利な考え方として類型論アプローチと特性論アプローチについて述べたいと思います。

類型論アプローチと特性論アプローチとは?

ピープルアナリティクスを活用して、たとえば従業員の仕事の能力をアセスメントし、フィードバックするという具体的な場面を想定した方が分かりやすいと思います。たとえば、対顧客交渉力、社内調整力、プレゼン力、文書作成力、企画力、事務の正確さ、、、、をそれぞれ数値評価したとします。

その結果を従業員にフィードバックする方法としては、単純に棒グラフやレーダーチャートでフィードバックすることが考えられます。この複数の軸の数値評価をそのままフィードバックする方法を特性論アプローチと呼びます。仕事の能力以外にも性格、マネジメント傾向等を数値化して、棒グラフやレーダーチャートでフィードバックする場合も特性論アプローチと言えます。

なお、特性論アプローチによりフィードバックする際には、社内の同じグレード内の偏差値とするなど、自分のフィードバックの相対的な位置づけが分かりやすいように変換した数値をフィードバックすることをお勧めします。対顧客交渉力が0-10点、社内調整力が0-20点、プレゼン力が0-100点というように、複数の指標で数値の範囲や単位が異なる場合にも偏差値のような相対的な指標に変換することで適切に比較することが可能となります。

もう一方の類型論アプローチは、数値的な評価をそのまま伝えるのではなくフィードバック内容をA、B、Cのようなランク、あるいは血液型のように何らかのパターンに分類して伝える方法です。学校の通知簿の評価や雑誌の付録などでフローチャートをたどっていくとあなたの性格やライフスタイルのタイプが分かるというのも類型論アプローチと言えるでしょう。

たとえば、ピープルアナリティクスによる分析結果が数値の場合には、50~60⇒B、60~70⇒Aといった形で一定の閾値を決めて数値をランク付けに変換します。また、複数の軸の評価がある場合には、「対顧客交渉力、プレゼン力+企画力の平均>50、かつ、社内調整力+文書作成力+事務の正確さ>50⇒万能型」のように定性的に分類ロジックを決めることも可能ですし、統計的な手法によって分類する方法、統計的な手法での分類結果を参考にしながら分類ロジックを作るといった方法が考えられます。

両アプローチのメリットとデメリットとは?

以上で述べた両者のアプローチにはそれぞれメリットデメリットがあります。

まず、特性論アプローチは、元々の評価をなるべくそのまま伝えるため、情報量をそのまま維持しやすいのがメリットと言えます。先ほどの仕事能力であれば、対顧客交渉力=B、社内調整力=A、プレゼン力=Bといった何らかの閾値でランク分けすることなく、対顧客交渉力=60、社内調整力=73、プレゼン力=63といった形で伝えますので、より評価がきめ細かくなります。ただし、評価軸が多くなると理解するのにリテラシーが必要になること、評価軸の数が多い場合はフィードバックされた側が「で、結局なんだっけ?」と感じることが多くなり、結果のインパクトが薄くなりがです。

一方、類型論アプローチは、対顧客交渉力=B、社内調整力=A、プレゼン力=Bといった何らかの閾値でランク分けしたり、各評価軸は数値で伝えたとしても全体の評価を「ネゴシエーション型」、「クリエイティブ型」、「事務型」といった形で分類する考え方です。この方法の特徴としては、自分の評価がランク付けされたりタイプ別に分類されるため、解釈しやすく記憶にも残りやすいということです。

類型論アプローチのデメリットとしては、たとえば、対顧客交渉力が60~65⇒Bのようなランク付けをすると同じ1程度のスコアの違いで閾値の付近でランクの変化に直結すること、同じランクになる数値の範囲が広い場合には少しの評価の違いがランクに反映されないといった、情報の損失が発生します。また、フィードバックされたランクが昇進や賞与に直結する場合には、閾値の根拠やランク分けのロジックについてフィードバックされた側から説明を求められることが多くなりがちです。また、全体の評価を「ネゴシエーション型」、「クリエイティブ型」、「事務型」といった形で分類してしまうと、分かりやすい反面過度の単純につながってしまうリスクもあります。

心理学、行動科学の世界では、パーソナリティやリーダーシップ行動が、当初は類型論アプローチによって検討されてきたのが、特性論アプローチによって検討されるに至るという歴史を持っており、特性論アプローチの方が現在主流のアプローチとなっていますが、実務においては、分かりやすく記憶に残りやすい類型論アプローチが有効な場合も多くあります。

なお、両アプローチを併用するということも考えられます。つまり、仕事の能力をレーダーチャートは棒グラフで表現するとともにランクも併記し、全体の○○型というタイプ分けも伝えるという方法です。この方法では両アプローチのメリットを享受できます。一方で、この両者折衷型のアプローチを採用した場合、数値評価とランクが併記されることで両者の関連、ランク分けの妥当性についてより説得力が求められることになります。したがって、ピープルアナリティクスを活用する側、評価する側にとっては、理論的な背景、数値の意味、数値からランクに変換するロジック、全体評価で分類する場合はそのロジックと妥当性について明快に説明できるようにしておく必要があります。

終わりに

今回は、ピープルアナリティクスを活用してフィードバックを伝える際に、2つのアプローチについて説明しました。ピープルアナリティクスを利用したフィードバックを検討するにあたっては、今回説明した類型論アプローチと特性論アプローチにもとづいてそのメリットデメリット整理して考えるとこと をお薦めします。

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