2023年のメンタルヘルスケア業界の動向

はじめに

今回は2024年以降のメンタルヘルスケア業界の動向を占うために、2023年の動向を上場企業、非上場企業に分けて振り返ってみたいと思います。

上場企業の動き

現在メンタルヘルスケアを主要事業とする上場企業としてはアドバンテッジリスクマネジメントとメンタルヘルステクノロジーズの2社が存在します。まず、この2社のリリースをもとに2023年の動向を見てみたいと思います。なお、下記の年月はリリース発表日を基準としています。

アドバンテッジリスクマネジメント

•2023年2月 パルスサーベイ「アドバンテッジpdCa(ピディカ)」のMicrosoft Teams アプリ提供開始

•2023年4月 ストレスチェックサービスのココムを買収

•2023年5月 人的資本コンサルティングの開始

•2023年6月 日本デジタルデトックス協会と提携したストレスマネジメント研修を提供開始

•2023年6月 OKRクラウドサービス提供のResilyを買収

•2023年9月 アデコと業務提携

メンタルヘルステクノロジーズ

•2023年2月 H.U.グループと戦略的パートナーシップを構築

•2023年3月 オムロンと戦略的パートナーシップを構築

•2023年4月 第一生命保険と戦略的パートナーシップを構築

•2023年8月 商工組合中央金庫と業務提携

•2023年9月 那覇市教育委員会によるメンタルヘルス対策を支援

•2023年11月 千葉市教育委員会によるメンタルヘルス対策を支援

2社を比較するとアドバンテッジリスクマネジメントは、新規サービスのリリースが目立つことが分かります。公表された2社の買収のうち「ここむ」についてもストレスチェックサービスの顧客基盤を狙ったものと推察されますが、「Resily」の買収はOKRクラウドサービスを自社の新規サービスとして取り込む狙いがあるものと推察されます。一方、メンタルヘルステクノロジーズは、大手企業とのパートナーシップ構築が目立ちます。大手企業が有する顧客基盤を得ることが主な狙いと推察されます。また、教育分野への進出も特徴的な動きです。

非上場企業の動き

メンタルヘルスケアを主要事業として提供する非上場企業は数多く存在しますが、非上場企業のため決算はもちろん事業に関する開示情報が圧倒的に少ないのが現状です。そのため、全体に共通する動きとして、メンタルヘルスケアの普及やメンタルヘルスケアサービスの効果検証に関するコンソーシアムに参加する動きを紹介したいと思います。。

健康経営アライアンス

本団体は、健康経営の推進のためのアライアンスで、企業間、省庁や学術機関などとも連携して、健康経営の実践とソリューションの開発・実装をリードすることを目的として設立されています。会員企業には、emol、京都工場保健会、cotree、さんぎょうい、Smart相談室、ピースマインド、フィスメック等のメンタルヘルスケア企業が含まれています。

https://kenkokeiei-alliance.com/about#about_03

職域における心の健康関連サービス活用に向けた研究会

NTTデータ経営研究所が設立した研究会です。下記のような目的が謳われています。サービス提供事業者としては、アトラエ、  emol、アドバンテッジリスクマネジメントが含まれています。 

研究会では、雇用主・サービス提供事業者・アカデミアの3者によって、民間サービスの情報開示の在り方についての検討が行われるほか、雇用主・サービス提供事業者の各作業部会を構成し、雇用主による「心の健康関連サービス(以下、サービス)」の選択を支援するツールの開発や検証などを行います。

https://www.nttdata-strategy.com/newsrelease/230713_02/

メンタルヘルスケア業界は大手企業が少なく、中小規模の企業が多い業界です。業界としてのまとまりに乏しく大学や行政との結びつきも他業界に比べて弱いため、メンタルヘルスケア業界としての情報発信やサービスの品質保証等に手が出せていないのが現状です。上記のようなコンソーシアムの動きにより、メンタルヘルスケア業界からの情報発信や業界としての品質保証の動きが進むことを期待したいと思います。

以 上

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