HRテックにおけるビッグファイブ理論の活用可能性

はじめに

現在様々な HRテックを謳ったサービスが提供されています。
HRテックとは一般にテクノロジーを活用して人事課題を解決するツールと定義することができると思います。

近年普及しつつあるHRテックには、勤怠管理、社会保険といった手続き業務を効率化するものもあれば、採用業務、人材配置、メンタルヘルス対策等を、データにもとづいてより正確かつ効果的に行うものもあります。

今回は特に後者の採用業務、人材配置、メンタルヘルス対策を効果的に行うためのHR テックの開発に関してポイントを述べたいと思います。

HRテックの開発に必要な3要素とは

弊社では、HRテックの開発に必要な要素としては、①システム、②解析技術、③心理学・行動科学の知識と考えています

そのうち、①システム開発に関しては、システム開発やいわゆるSaaS型サービスを主に手掛けていた企業がHRテックを展開しているということもあり十分な技術を持ってる企業が多い印象です。

②統計解析技術については、昨今のデータサイエンスブームで注目を集めており、重要性が認識されてきたと感じております。

弊社として、重要性が認識されていないと感じるのが③心理学・行動科学の知識です

HRテックにおいては、人の行動や意識をデータ化して分析することが基本となります。採用検査であれば、採用時に収集したさまざまな情報を分析して採否の判断材料を提供する、人材配置であれば、これまでの経験業務や業務考課を分析して、配属部署の判断材料を提供するといったことが考えられます。

基本的には、収集した人の行動や意識に関するデータをシステム上で統計解析すると一定の性能のHRテックが開発されるのですが、どのようなデータを収集すれば良いかという点では心理学・行動科学の知見が必要になります。

最近では、深層学習等の技術により、とにかく既存の大量のデータをインプットすれば良いと考えてしまう事例が散見されますが、そもそも予測に有用でないデータをいくら投入しても予測精度は向上しません。また、データが多い分だけ予測モデルが必要以上に複雑になったり、学習に時間がかかることになります。

性格やパーソナリティに関するデータ

弊社としては、HRテックで最も有用な(だが活用されていない)データは、性格やパーソナリティに関する情報と考えています。

性格やパーソナリティに関しては心理学・行動科学の中で長い研究の歴史があります。現在では、ビッグファイブ理論という議論が学グローバルスタンダードを占めるに至っています

ビッグファイブ理論とは

ビックファイブ理論とは性格が5つの特性からなると考える理論です。
5つの特性とは神経症傾向、外向性、開放性、調和性、誠実性の5つの領域を指します。なお、ビッグファイブ理論は、血液型のように人がこのうちの5つの性格類型に分類されるのではなく、誰しも5つの特性を一定程度保有しており、その程度のバランスによってその人の性格が表現されると考える点がポイントです。

  • 神経症傾向  不安、敵意、抑うつ等
  • 外向性    暖かさ、群居性、活動性等
  • 開放性    空想、審美性、アイデア等
  • 調和性    信頼、利他性、慎み深さ等
  • 誠実性    秩序、良心性、達成追求等

ビックファイブ理論が有用なのは、業務のパフォーマンスを含む様々な要因との関連が示されていること、ビッグファイブの特性と生物学的基盤との関連も明らかになってきている点です。

仕事の業績に関しては、全般的に誠実性と関連があるとされています。
業種別にみると、たとえばセールスやマネージャーのような仕事では業績と外向性が関わっているということも知られていますが、業績とビッグファイブの関連を調査した多くの研究からは総じて誠実性と業績の関連が示唆されています。

また、仕事を辞めようと考える離職意思は、神経症傾向との関連、実際の退職については誠実性と調和性(高いほど退職しづらい)が関わってるということが示されています。

以前弊社ブログにて紹介したようにテレワークでのサボり行動とビッグファイブが関連しているということが分かっております。https://better-options.jp/2020/05/14/%E3%83%86%E3%83%AC%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%81%AB%E5%90%91%E3%81%84%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E4%BA%BA%E3%80%81%E5%90%91%E3%81%8B%E3%81%AA%E3%81%84%E4%BA%BA%E3%81%AF%E3%81%A9%E3%82%93%E3%81%AA/

したがって、採用や人材配置、リテンション等を目的とするHRテックにおいては、ビッグファイブをインプットとして活用しない手はないと言えます。

ビッグファイブ理論をHRテックで活用していくには

実は、人事部門においてはこのビッグファイブについて、採用時に調査されデータが保有されていることが多いです。しかし、上記のような採用判断や人材配置に活用されていることは残念ながら稀で、死蔵したデータとなっていることが多い印象です。

これまで性格、特にビッグファイブのHRテックにおけるインプットとしての有用性について述べました。ビッグファイブに関してはSPI等の筆記試験と同時に自記式の質問票でデータを収集することが一般的です。そのため、応募者は自分をよく見せようと、実際には誠実性が高くなくても誠実性に関する項目について良く回答するということが考えられます。

こうしたことを防ぐためには、最近のソーシャルメディアの情報から性格傾向とを予測する研究が参考になります。多くの研究の結果、人の記述した言語情報によってビッグファイブにもとづく性格が一定程度の予測されることが明らかになっています。

例えば以下のようなやり方が考えられます

まず採用に関係ない1、2年生の大学生のサンプルを集めます。
そしてそのサンプルの学生に対して性格検査を受けてもらうとともに一定の課題を与えて文章を書いてもらいます。そしてこの文章とこの性格の関係を分析します。

現在では自然言語処理と呼ばれる技術が発展・普及しており、この文章からその文章特徴を表す特徴量を抽出して、性格検査で測定された性格を予測できるかどうかをこのサンプルで試します。そしてこのサンプルで十分な予測ができることが分かった場合は実際に本番の試験に投入し、課題文から応募者の性格を予測します。

なお、予測モデルの作成と検証を行う際には学習サンプルと訓練サンプルに分けて交互検証を行う等が重要です。自社にそうした機械学習や心理統計学に関する専門家がいない場合は、外部の専門家の知恵を借りることが望ましいと考えられます。

以 上

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